オリコンの記録を参照すると、永井秀和さんの「恋人と呼んでみたい」が発売されたのは昭和42年10月5日です。
しかし、ミュージックマンスリーのランキングでは昭和42年9月、10月にヒットしていました。
集計日付 | 順位 |
昭和42年9月25日 | 20位 |
昭和42年10月25日 | 24位 |
※『ミュージックマンスリー』歌謡曲部門のランキング推移
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 JVCKENWOOD Victor Entertainment Corp.; Muserk Rights Management
どちらが正しいか?と言うと、ミュージックマンスリーの方が正しいと考えます。レコードジャケットには「1967.9」と印刷されていますし、レコードの発売日は意外と特定が難しいからです。
「何が売れていたのか?」は、レコード店に問い合わせれば分かります。しかし、「このレコードっていつ発売されました?」と尋ねるのは、発売元のレコード会社に問い合わせるしかないのですが、どうやら何月何日かを特定できる精度の資料が残っていないように感じます。
今となっては、当時の新譜案内のレコード会社の月報で「何月に掲載されているか?」で突き止めるのが限界です。
オリコンではカラオケランキングも集計していますが、現在でもノミネートされる「銀座の恋の物語」の発売日を、昭和36年1月1日としています。根拠は不明ですが、オリコンは創設以前のレコードの発売日を1日としているようです。
「恋人と呼んでみたい」は、グループサウンズのブームである昭和42年に登場した青春歌謡です。
青春歌謡は、業界にとっても世間にとっても、流行の波から外れた時期に差し掛かった時期でした。
青春歌謡と言うと、つい歌謡曲風の作品だと捉えてしまいますが、「恋人と呼んでみたい」は新風であるエレキサウンドを取り入れており、時流に合わせたノリの良い、テンポの早い作品となっています。
ノリの良さを感じる理由は、現代でも通じるウラ拍を用いている事だと感じます。ウラ拍は、4分の4拍子の作品で、強・弱・強・弱でリズムを刻むのではなく、弱・強・弱・強とずらしている事です。これだけで軽さやリズム感が生まれるのは不思議と感じます。
こういった海外の作曲技巧を取り入れた作品であるため、ブームを過ぎた頃に登場した「恋人と呼んでみたい」は、青春歌謡の中でも新しい表現を用いた作品として、当時の人たちの記憶に残った作品となっているのではないか?と感じます。
この作品がテーマにしている事は、好きな人に自分から気持ちを伝えられない受け身な男の子の心情です。片想いの相手が望むことなら、自分は喜んで相手になってあげる、という好意が綴られています。
きっと、本当は自分から声を掛けたいのでしょうが、「明日があるさ」の主人公のように、気の弱い男の子なのかもしれません。青春歌謡では割と頻繁に登場する人格を持つ男の子です。
昭和40年代は、海外から次々と新しい音楽が輸入された時代です。ボサノバのように消化不良のままに終わった印象を受けるジャンルもありますが、「恋人と呼んでみたい」は、当時の流行の波に乗っておれば、もっとヒットしたのではないか?と感じる作品の1つです。
昭和42年9月に登場しましたが、1、2年ほど遅かったためにそれほど支持を集められなかった印象を受けます。
バンドプロデューサーの分析では、「恋人と呼んでみたい」はCm(ハ短調)です。
曲情報
1967年 年間81位(歌謡曲部門)
レコード
発売元:ビクターレコード
品番:SV-607
A面
「恋人と呼んでみたい」
演奏時間:2分50秒
B面
「愛してくれて有難う」
演奏時間:3分3秒
参考資料
「恋人と呼んでみたい」レコードジャケット
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
「バンドプロデューサー」