昭和53年はディスコ・サウンドが大流行した年でした。映画『サタディ・ナイト・フィーヴァー』が公開された年で、この映画のヒットによって、数年前から注目を浴びていたディスコ・サウンドがたくさんの人たちに支持されるようになりました。
ディスコ・サウンドの発祥は、ヒットチャート的には昭和50年に発売されたLP盤「バンプ・イン・ディスコティック」から始まります。昭和49年に登場した流行りのディスコ・ステップであるバンプが、日本のディスコ・サウンドの始まりと捉えています。同年にはバンプに続く人気ステップの「ハッスル」が流行したようです。
その後も、ディスコ・サウンドの流行は続いていましたが、大きな流行という印象はありませんでした。映画『サタディ・ナイト・フィーヴァー』は日本ではくすぶっていたディスコ人気を一気に加速させた映画だったのだと感じます。
「ステイン・アライヴ」は『サタディ・ナイト・フィーヴァー』の主題歌です。たしかオープニング映像でジョン・トラボルタさんの歩くシーンで、足元の映像が映る背景で流れていたと思います。
「ステイン・アライヴ」は、劇中歌「恋のナイト・フィーヴァー」が発売される3カ月前の昭和53年3月に発売されました。「恋のナイト・フィーヴァー」とともに、8月にヒットしました。
ちょうど夏休みの時期で、若い世代を中心に、日本中が最もディスコ・サウンドに夢中になっていた時期だったのではないかと感じます。
ヒット曲には、聴き手をとりこにする何かを持っていると感じているのですが、何が夢中にさせるのでしょうか?
基本的な要素は、歌詞で描いたり、歌唱で魅せたりと、とにかく作品の世界観を形にできる表現力があるかないかで決まるのだろうと考えています。
しかし、もう一つ理由もなく惹きつけられるリズムの存在があります。
私は「ステイン・アライヴ」は好きですが、どこが好きか?と言われても簡単に説明できません。
なぜか聴いていて良い曲と感じるからですが、おそらく、この作品の魅力はビー・ジーズさんのハーモニーというより、日本語では生み出すことが難しい、リズム感のあるメロディだと感じます。
50音の日本語は母音の発音がはっきりとしているため、16分音符で発音するにはハンデがあります。仮に発音できたとしても意味が伝わるように感情を込めて歌えない言語と考えています。
英語に限らず、中国や韓国のアジアの言語も、細かなリズムに合わせて自由に発音できる言語であると感じています。
海外で日本の曲がヒットできないのはこの壁があると感じていますが、日本には存在しないリズム感を体験できるのが、ディスコ・サウンドの1つの特徴です。楽譜を見ても簡単に演奏できません…。
バンドプロデューサーの分析では、「ステイン・アライヴ」はD♯マイナー(嬰ニ短調)です。音階は47抜き長音階の短調版である26抜き短音階です。
海外の作品はかっこいいと感じる作品が多いのですが、メロディはシンプルな作品が多いです。「ステイン・アライヴ」もメロディは単純で、歌手の音域も1オクターブ以内に収まっています。
音域が狭い歌というのは、アイドル作品で見かける事がありますが、基本的には日本の文化ではあまり見られません。
その代わりに凝っているのが、楽譜のタイ記号の多さから感じられるリズムの刻み方です。聴きなれないサウンドは、何度聴いても飽きが来ません。
曲情報
発売元:ポリドール株式会社
品番:DWQ6049
A面
「ステイン・アライヴ」
原題:STAYIN' ALIVE
演奏時間:3分42秒
B面
「アイ・キャント・ハヴ・ユー」
原題:IF I CAN'T HAVE YOU
演奏時間:3分21秒
参考資料
「ステイン・アライヴ」レコードジャケット
『永遠のポップス2』全音楽譜出版社
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
『オリコンチャートブック〈LP編(昭和45年‐平成1年)〉』オリコン
「you大樹」オリコン
「バンドプロデューサー5」