魅惑的な女性が登場する際や、官能的なシーンに流れるBGMとして多用される印象がある「ふたりの天使」は、多くの人がご存知の作品と思います。
スキャットが印象的なこのレコードは、昭和45年6月に発売され、8月から9月にかけてヒットしました。
テレビではBGMとして用いられ、おなじみとなっている作品ですが、レコードジャケットの解説を読むと、“さわやかでユニークなレコード”と表現されています。
現在の日本では、製作者の意図に反した広まり方をしている印象がありますが、「ふたりの天使」は、癒しを感じるイージーリスニング系統の作品です。
1960年代以前に流行した、室内で落ち着いて聴くような、楽団の器楽演奏の要素を含んだ作品です。
レコードジャケットの解説を引用させていただくと、この作品はフランスの作品で、原題は「CONCERTO POUR UNE VOIX(ヴォーカルのためのコンチェルト)」という意味になります。フランス語です。
まるでクラシック作品のタイトルですが、サン・プルーさんが作曲された新曲です。
(この作品を聴いて「ふたりの天使」と和訳された方は、豊かな感性を持っておられると思います。)
昭和3、40年代は、現在のようなインターネットの技術も無いのに、あらゆる国々の作品を輸入してレコードを発売されていました。
当時の洋楽レーベル所属の方々がモーレツに情報収集をしてくれたおかげで、様々な洋楽ヒットが誕生しましたが、フランスの作品は、日本で支持を得た曲が多いように感じます。この作品もその中のひとつです。
「ふたりの天使」のヴォーカルで、スキャットを披露するのはダニエル・リカーリさん、伴奏をしているのはサン・プルー楽団さんです。
この作品を聴いた後、印象に残る部分を占めているのは、ダニエル・リカーリさんのスキャットであると思います。しかし発売当時は、ネームバリューではサン・プルー楽団さんの方が大きかったようです。
レコードジャケットでは、演奏と歌を別々に記載されておりますが、演奏を前に持ってきているため、記載の序列から、演奏がメインと感じるような扱いがされています。
レコード会社的には、演奏が主で、歌手はオマケといった扱いだったのでしょうが、聴き手にとっては、歌手がメインと感じる作品です。
1960年代以前は、美しさを感じるメロディを楽団が演奏する作品が多数登場していました。「ふたりの天使」はその系統の作品として発売されたように思います。
しかし、歌詞のないボーカルが加わった「ふたりの天使」は、従来の作品とは異なり、ボーカルが勝っています。
バンドプロデューサーの分析では、「ふたりの天使」はF♯マイナー(嬰ヘ短調)。楽団の演奏作品に慣れ親しんだ人たちにとっては、今までに聴いたことのない新鮮さを感じる、画期的な作品だったのではないか、と感じます。
曲情報
発売元:日本コロムビア株式会社
品番:LL-2354-AZ
A面
「ふたりの天使」
原題:CONCERTO POUR UNE VOIX
演奏時間:4分
B面
「ヴァリエーションズ」
原題:VARIATIONS
演奏時間:2分25秒
参考資料
「ふたりの天使」レコードジャケット
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
「you大樹」オリコン
「バンドプロデューサー5」