ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「盆帰り」中村雅俊(昭和51年)

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 「盆帰り」は昭和51年5月に発売され、翌月の6月から8月にかけてヒットしました。

 流行のピークは7月上旬ですが、それ以降も長期間にわたって上位にランクインした息の長い作品です。ちょうど歌の主題になっている季節にもランクインし続けていました。

 

 最近はほとんど姿を見せなくなったロングセラーの売れ方ですが、これが本来の流行歌の性質を備えているタイプの作品と言えます。

 


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 歌っているのは、中村雅俊さんです。この作品がヒットするまでに、

 

 『われら青春!』挿入歌の「ふれあい」(昭和49年)、

 『俺たちの勲章』挿入歌の「いつか街で会ったなら」(昭和50年)、

 『俺たちの旅』主題歌の「俺たちの旅」(昭和50年)、

 

と、ご自身が出演されるドラマ主題歌を歌われ、連続してヒットしていました。すでにヒット曲を持っている時期に「盆帰り」は発売されました。

 

 ちなみに、「ふれあい」が中村雅俊さんのデビュー作品になります。

 

 

 音楽ビジネスの世界では、テレビ番組との相乗効果を狙うタイアップ作品と定義できますが、「盆帰り」は番組とは関係のないレコードとして発売されています。

 

 実際にヒットしていますので、『テレビの力を借りなくても歌で人気を獲得している俳優だ!』と、当時のレコード会社の担当の方々が確信されたのだと思います。

 

 

 「盆帰り」は前作「俺たちの旅」と同じ、小椋佳さんが作詞・作曲された作品です。

 

 音楽を言葉で表現するのは難しいのですが、小椋佳さんの作曲される作品は、聴いた感想としては、とても上品な印象を受けます。

 

 “上品”だと感じる最大の理由は、盛り上がるサビの部分が少ない事です。昭和50年にヒットした小椋佳さんの作品である「シクラメンのかほり」や「俺たちの旅」、「めまい」は、

 「1番⇒2番⇒サビ⇒3番⇒サビ」という構成で作曲されています。1番のサビが無く、聴き手の欲求というか音楽的な解決を溜めるような作風なのでしょうか。

 

 私は音楽知識は薄いですが、最も訴えたい箇所であるサビを省略する手法は、「言いたいことをあえて言わない。」と捉える事ができ、品の良さを感じる事ができます。

 

 

 また、言いたいことが分からない、もしくは分かりにくい、と言われる“歌詞の難解さ”が特徴として挙げられますが、「盆帰り」は比較的分かりやすい心情が描かれているように感じます。

 

 会社勤めをする男性が主人公の「盆帰り」は、お盆休みに故郷に帰省するときの心情が描かれています。

 お盆と言えば、ご先祖様のお迎えやお見送りの行事ですが、タイトルの「盆帰り」の意味は、実際のお盆とは関連していません。お盆休みの間に実家に帰り、また仕事が始まるから都会に帰る主人公の視点で作られています。

 

 この時期のヒット曲の歌詞は、実際に発言するセリフだったり、「~みたい」とか「~なのね」と、心の中で自分がどう感じたかが明確にされている事が多いです。

 しかし、小椋佳さんの歌詞は、抽象的な比喩を用いる等して、その描写を避けています。

 

 「盆帰り」では、「どうして、短い休みの間だけ故郷に帰って、日常に戻ったら故郷の事を忘れて、毎日生活を送ってるの?」と、第三者の視点で描かれる心の声が印象に残ります。歌の主人公がそう思っているのではなく、客観的な見方で表現した点に、新しさを感じます。

 

 バンドプロデューサーの分析では、「盆帰り」はG♯マイナー(嬰ト短調)。小椋佳さんの他の作品とは違って、サビを最後の最後まで出さないので、後半の部分の盛り上がりも印象的な作品です。

 

 

曲情報

 発売元:日本コロムビア株式会社

 品番:PK-7

 A面

  「盆帰り」

  演奏時間:4分45秒

 

 

 B面

  「風のない日」

  演奏時間:4分29秒

 

 

参考文献

 「ふれあい」レコードジャケット

 「俺たちの旅」レコードジャケット

 「盆帰り」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 「you大樹」オリコン

 「バンドプロデューサー5」