流行時期(いつ流行った?)
オヨネーズさんの「麦畑」は、平成元年(1989年)から翌年にかけてヒットしました。
1990年のほうがヒットの規模が大きいように感じます。1989年8月に発売されたCDは11月からヒットし始めています。
忘年会で場を盛り上げるための宴会ソングとして人気を集めた?と感じます。
「麦畑」は類似の作品が無く、今も色あせない魅力を持つヒット曲と感じます。
注)オヨネーズ - トピックの動画
気持ちが伝わりやすい地元言葉
「麦畑」はデュエットソングですが、コミックソングの要素も備えていると思います。どちらもヒット曲の世界では稀なカテゴリです。
どちらかと言うと、デュエットよりコミック感がありますが、その理由は、東北地方の地元言葉と感じられる作詞です。
「なぜ東北地方の話し言葉がコミカルに受け止められるのか?」は、他の地域の話し言葉と比べると分かります。
他の地域で思いつく方言は、関西弁の大阪府や博多弁の福岡県です。どちらにも共通するのは「上京するのなら死ぬ気で頑張れ!」と、厳しく叱咤激励する心情が含まれやすい事です。
「東京で恥をさらすような事をしてはいけない!」というライバル心というか、必要以上に意識している心理が窺えます(汗)。
しかし東北弁の作品にその心情は一切登場しません。
どちらかと言うと「東京は危険がいっぱいだから気を付けて!」と心配する気持ちで描かれます。
県民性の価値観の違いを感じます。
愛情を感じる東北の話し言葉
東北弁が全国区になったのは、1980年代に活躍された青森県五所川原市ご出身の吉幾三さんの功績が大きいと感じます。
「俺ら東京さ行ぐだ」(1985)が有名ですが、その前に千昌夫さんの「津軽平野」(1984)を作曲されています。とても郷土愛を感じる作品を作られています。
時代をさかのぼれば「スタコイ東京」(1960)もあります。(「スタコイ東京」は”聴き手に東北弁を連想させる作詞“で、実際に用いられていたのかは不明です。)
時代は違っても「都会は気を付けて!」と願う"家族の愛情"が共通して描かれています。
東北弁はおそらく他の地域の方々が耳にすると、"聴いていて気持ちが安らぐ"と思います。優しさがにじみ出る話し言葉だからだろうと思います。
方言を題材にすると"地方と都会"が主題になりがちですが、「麦畑」は、ただ相思相愛の二人が心を通わせている心情を描くためだけに用いられています。
この発想は面白いです。歌詞に東京が登場せず、地元のみで完結する他の作品は「河内のオッサンの唄」(1976)しか思いつきません。
日本で愛されるスコットランド民謡
スコットランド民謡はなぜか日本人に愛されています。幅広く知られている作品には、毎年『紅白歌合戦』のエンディングで耳にする「蛍の光」があります。
「麦畑」のイントロで流れる有名なメロディは「故郷の空」です。
(最近は見かけなくなりましたが、「故郷の空」は横断歩道の黄色い音響装置でよく耳にした記憶があります。)
♪誰かさんと誰かさんが麦畑~というフレーズが有名ですが、日本でいつ頃に広まったのか?は分かりません。
テレビを通して幅広い世代に広めたのはドリフターズさんと思います。「誰かさんと誰かさん」(1970)を発売されています。
ドリフターズさんは歌詞を面白く改変した作品を発表されますが、「麦畑」を作詞・作曲された榎戸若子さんも同様の心理だったかも知れません。
「もし、“誰かさんと誰かさん”が東北の人同士だったら?」というひらめきで「麦畑」を製作されたのかも知れません。
誰もが知っている作品に一歩踏み込んで、全く別の作品を作り上げたアイデアは凄いと感じます。
曲情報
発売元:ビクター音楽産業株式会社
品番:VDRS-1166
発売日:E.8.21(1989/8/21)
A面
「麦畑」
作詩・作曲:榎戸若子
補作詩・補作曲:上田長政
編曲:伊戸のりお
びーめん
「男酒女酒」
作詩:臼井ひさし
作曲:上田長政
編曲:伊戸のりお
参考資料
「麦畑」CDジャケット
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン