流行時期(いつ流行った?)
TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Naestroさんの「Bella ciao (feat. Maître Gims, Vitaa, Dadju & Slimane) 」は、2018年にフランスでヒットしました。
5月末~8月下旬にかけてベストテン入りしています。
注)GIMS 公式アーティストチャンネルの動画
「ベラ・チャオ」ブームはドラマがきっかけ?
2018年、なぜか「Bella Ciao」が様々なアーティストによって発表されています。ランキングに登場した作品は下記の通りです。
<2018年にランクインした「Bella ciao」>
曲名 | 歌手名 |
Bella Ciao (La Casa De Papel) | The Bear |
Bella Ciao | El Profesor |
Bella Ciao | Sound Of Legend |
Bella Ciao | Manu Pilas |
Bella Ciao - La Casa De Papel | Berlin |
Bella Ciao | Naestro |
ヒットチャートを見ていればすぐに気付く不自然な流行です。
「何がきっかけだろう?」と思って調べても、「ベラ・チャオ」はイタリアの音楽で、"第二次世界大戦時のファシズムのムッソリーニ政権に賛同出来ないイタリア人たちで結成されたパルチザン(レジスタンス)の歌"という、歴史的に意味を持つ作品という情報が真っ先に登場します。
しかし、このブームのきっかけは、いくつかの曲名の副題となっているスペインで製作されたドラマ『La Casa De Papel(ペーパー・ハウス)』のようです。
作中で「Bella ciao」が使用された事で注目を集めた事が真相のようですが、複数のアーティストが同じ作品で作品を発表する現象は珍しいです。きっかけはドラマかも知れませんが、曲が持つ力を感じます。
(・・・第二次世界大戦の頃に、イタリアでそのような音楽が生まれていた事は知りませんでした。私はこのドラマがヒットしなければ知る事はなかったと思います。)
戦争は遠い昔の出来事?
最もヒットしたのがNaestroさんの「Bella ciao (feat. Maître Gims, Vitaa, Dadju & Slimane) 」ですが、歌詞を流行歌のラブソングのように表現した事が疑問視されたようです。
YouTubeの公式動画のコメント欄には、フランス人から歌詞に対する批判的な意見が書き込まれています(イタリア人に謝罪する書き込みも目立ちます。)
…少し皮肉な表現をしてしまいますが、では謝罪する以前にヒットしてはいけない作品だったのではないか?と感じたりします。そして、曲の意味が失われている年数が経過した事も感じます。
偶然と思いますがこの年、バイクのカワサキと長崎で韻を踏むDJ Snakeさんの「タキタキ・ルンバ」(2018年)の歌詞が日本で問題視されました。(公式動画は歌詞が変更されています。)
(・・・ワンダ・ジャクソンさんの「フジヤマ・ママ」(1958)がヒットした時に、同じような出来事があったのかどうかは不明です・・・(^^;A)
作品を支持する人がいて結果的にヒットする事は、それだけ第二次大戦の記憶が失われ、遠い昔の出来事という価値観が勝っている事を示していると思います。
似た現象かも知れませんが、2010年代に入ってからの日本では、漫画やアニメなどで"大正時代がファンタジーの世界として扱われる価値観"が市民権を得始めたように感じます。
戦勝国でも敗戦国でも、第二次世界大戦が現代社会の秩序を構築したという価値観を心のどこかで理解していると思います。それが、あえて触れる事を避けてきた理由と思います。
知っておかなければいけない事ですが義務教育で教室で学べるレベルの話ではなく、実際に経験した世代がいなければ伝えられない出来事。当時を知っている世代が少なくなった2020年代に入ってから世界の秩序が不安定と感じますが、大きな出来事が起きない事を願っています。