ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「ごめんねチコちゃん」三田明(昭和39年)

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流行時期(いつ流行った?)

 三田明さんの「ごめんねチコちゃん」は、昭和39年(1964年)にヒットしました。…ただ、"レコード売上が好成績だった"という資料は見つかっていません。

 

 レコード店の売上ランキングを掲載する『ミュージック・マンスリー』誌や、レコード会社が月報等で公表する売上ランキングにも登場していない模様です。

 

 アイドル情報誌、月刊『平凡』の付録(歌本)に掲載される"読者投票による月間ランキング"では、長期間にわたって支持を集めた記録が残っています。

 

 

<『平凡』今月のリクエスト ベスト20のランキング推移>

月刊平凡発売月 順位 回数
昭和39年08月 11位 第5回
昭和39年09月 4位 第6回
昭和39年10月 6位 第7回
昭和39年11月 5位 第8回
昭和39年12月 4位 第9回
昭和40年01月 6位 第10回
昭和40年02月 19位 第11回
昭和40年03月 18位 第12回

 

 上表のランキングは、2019年3月末に閉鎖された「Yahoo!ジオシティーズ」で、fujiskさんがホームページ内で公開されていた情報です。 日付は『平凡』の発売月です。

 

 ハガキで募集した投票の結果が、数か月後に掲載されていたようです。

 

 


三田明★ごめんねチコちゃん★

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 JVCKENWOOD Victor Entertainment Corp.

 

 

恐るべし"歌本"の情報量

 とても気になるので、”歌本(うたぼん)”を入手してみました。

 

 『平凡』の場合は『平凡ソング』と名付けられていたようです。歌詞の掲載がメインのため、200~300ページと分厚い冊子です。

 

 歌手の地方公演の日程、レコード会社別の売上ランキング、曲に関する一言メモ、といった情報も掲載されています。

 

 「きっと当時の流行歌ファンの方々は、この歌本で色々な情報を入手していたんだろうなぁ~。」と推測されます♪

 

 雑誌付録ながらかなり濃い情報量で驚きました。オリコンが存在しない時代の記録なので、今となっては貴重な資料と思います。

 

<「ごめんねチコちゃん」初登場の回の読者ランキング>

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 ランキングでは、得票数も記載されていますね。

 

 

雑誌社が企画した作品

 レコードには「雑誌平凡募集当選歌」と印字されています。

 

 私の持っているレコードは二色刷りの初版で、吉永小百合さんの「この夕空の下に」がA面です。こちらも募集企画で作られた作品のようです。

 

 セカンドジャケットはカラー刷りで、「ごめんねチコちゃん」がA面に入れ替わっています。作品の人気ぶりを感じますね♪

 

 

 『月刊平凡』を発売していた平凡出版株式会社さんが読者に新曲の歌詞を募集する企画だったようです。

 

 実は『明星』が、先駆けて読者投票ランキングを行っていました。しかし、こちらではランクインしていないようです。

 

 「ライバル誌の企画なんて宣伝しないよ!」という敵対心がむき出しの感じがします…コワイコワイ(^^;A。

 

 "雑誌社が企画した読者投票"のため、結果を真に受ける事は難しいです。

 

 しかし、読者に歌詞を募集する企画は、当時は珍しい事ではありません。

 

 「ごめんねチコちゃん」はその企画からたまたま誕生した作品です。

 

 B面扱いで発売されたこの作品を特別視する理由は、平凡出版さんにも、日本ビクターさんにも存在しません。

 

 そのため、単純にファンに愛された作品だったと感じます。もしレコードが両面とも三田明さんの作品だったら、購入するファンの方も多かったのでは?と感じます。

 

 

ファンに愛されたヒット曲

 三田明さんは1964年の紅白歌合戦に初出場されています。出場曲は「ごめんねチコちゃん」です。

 

 レコード会社は「赤い夕陽」や「高校騎兵隊」と、三田明さんの新曲を次々と製作されていました。しかしNHKが選曲した理由は、"ファンに愛された作品"と評価したからだと思います。

 

 確かにこの作品は、三田明さんのキャラクターがすごく生き生きと描かれています。1番の歌詞は秀逸で、この時点で作品の世界に引き込まれます。

 

 歌本の曲紹介でも、下記のように書かれています。

ファンの名はみんな"チコちゃん" 平凡で作詞募集した三田クンの新しい歌『ごめんねチコちゃん』が受けています。ステージで三田クンが〽ごめんね、チコちゃん・・・・と歌うと、会場のあちこちから「ハーイ!」「いいわヨ、そんなこと」と大声がかかります。三田クンは「会場の女の子がみんなチコちゃんみたい。この歌は、今までの歌とはまたちがった調子で、僕も大好きな歌なんです」

  

 チコちゃんは幼馴染でしょうか。"声を掛けずに、おさげ髪をつまんで自分に気付かせる行動"は斬新です。舟木一夫さんや西郷輝彦さんの作品では表現できない、異性との距離感の近さが演出されています。

 

 "女の子が睨み返す"という描写も画期的です。青春歌謡では"女学生=あこがれの存在"という価値観が存在するので、髪に触れるなんてとんでもない事ですし、触れたら触れたで「睨んで来るの?!」と、初めて聴いた時は驚きました。

 

 美化せずに、等身大の若者の日常を描いた歌詞はこの作品の最大の魅力です。

 

 また、チコちゃんが主人公に恋心を抱いているのに、主人公はまだ友達感覚だったという関係も、分かりやすく表現されています。

 

 ここまで青春時代を踏み込んで描いた作品は、他に存在しません。

 

 歌手がまるで友達のようだと、親近感が湧いてしまう作品でもあります。

 

 

曲情報

 発売元:日本ビクター株式会社

 品番:SV-52

 

 A面

  「この夕空の下に」

  英題:KONO YUZORA NO MOTO NI

  作詩:室山多香史

  補作:佐伯孝夫

  作編曲:吉田正

  歌:吉永小百合

  演奏時間:3分14秒

 

  ビクター・オーケストラ

 

  「雑誌平凡募集当選歌」

 

 

 B面

  「ごめんねチコちゃん」

  英題:GOMENNE CHIKOCHAN

  作詩:安部幸子

  補作:佐伯孝夫

  作編曲:吉田正

  歌:三田明

  演奏時間:2分26秒

 

  ビクター・オーケストラ

 

  「雑誌平凡募集当選歌」

 

参考資料

 「ごめんねチコちゃん」レコードジャケット

 「Yahoo!ジオシティーズ」※サービス終了

 『平凡ソング 歌のドリームショー』平凡8月号第1付録