ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「こんにちは赤ちゃん」梓みちよ(昭和38年、昭和39年)

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流行時期(いつ流行った?)

 梓みちよさんの「こんにちは赤ちゃん」は、昭和38年(1963年)から昭和39年(1964年)にかけてヒットしました。

 

 『ミュージックマンスリー』の月間売上ランキングによると、1963年11月から1964年2月にかけて、4ヶ月連続で首位となっています。

 

<売上ランキング推移>

年月 順位
昭和38年10月 8位
昭和38年11月 1位
昭和38年12月 1位
昭和39年01月 1位
昭和39年02月 1位
昭和39年03月 5位
昭和39年04月 6位
昭和39年05月 12位
昭和39年06月 9位

『ミュージックマンスリー』、今月のベストセラーズ(邦楽)より

 

 

レコード発売と同時に売れた作品

 “レコードは11月に発売された”という記事を見ますが、『ミュージック・マンスリー』の記録では、発売前の10月に8位でランクインしています…。

 

 “発売前に売れている”という矛盾が生じますが、当時、各地のレコード店で前倒しして発売されたのでしょうか…(^^;A。

 

 仮に前倒しで発売されていたとしても、各地のレコード店に新譜として届いたのは10月末と推測されます。

 わずかな期間で月間売上の8位に入り込んでいる事になりますので、作品の人気ぶりを証明しているように捉える事も出来ます。

 

 もしもオリコンランキングが存在していたら、初登場1位を達成していたのかも知れないくらい、前評判が高かった事がうかがえます。

 

 

同時期に流行った曲(昭和38年11月~昭和39年2月) 

 邦楽では、石原裕次郎さんと浅丘ルリ子さんの歌う「夕陽の丘」三田明さんの「美しい十代」舟木一夫さんの「学園広場」村田英雄さんの「姿三四郎」などがヒットしています。

 

 洋楽では、エルヴィス・プレスリーさんの「悲しき悪魔」ヴィレッジ・ストンパーズさんの「ワシントン広場の夜はふけて」が首位となっています。

 他には、ブラザーズ・フォーさんの「北京の55日」ザ・ヴェルヴェッツさんの「愛しのラナ」ロネッツさんの「あたしのベビー」などがヒットしています。 

 

 

 


梓みちよ こんにちは赤ちゃん Konnichi wa Akachan 1963

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 KING RECORD CO., LTD.(King Record Co.,Ltd. の代理)

 

 

『夢であいましょう』1963年7月の「今月の唄」

 「こんにちは赤ちゃん」は、NHKのTV番組『夢であいましょう』で7月に初めて放送されました。

 放送後、譜面を求める問い合わせがNHKに殺到した事から、レコード化が企画されたようです。

 

 レコードは4か月後の発売となったためか、ジャケットには「『夢であいましょう』今月の唄」という番組名が印字されていません。

 歌詞の隣に、ニーズの高かった譜面も印字されています。

 

 また、レコードジャケットには1番の歌詞が印刷されています。すでに多くの人に知られている歌詞から「ああ、あの曲ね!」と気付いてもらえるように工夫されているように感じます。

 

 

“レコード大賞”に箔を付けた曲?

 「こんにちは赤ちゃん」は、(一応)11月に発売され、翌月に1963年のレコード大賞を受賞しています。

 

 5年目を迎えたレコード大賞が、多くの人たちに価値が周知されたイベントだったのか?は不明です。しかし「こんにちは赤ちゃん」が受賞した事でレコード大賞の存在感も増したのではないか?と考えています。

 

 「こんにちは赤ちゃん」には、レコード大賞受賞前と受賞後の2つのバージョンが存在しています。

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  受賞後はレコードジャケットも一新されていますが、レコード盤にも曲名の上に「1963年日本レコード大賞受賞」という肩書が印字されています。

 

 

 レコードが予想外に人気となると、新しいジャケットで発売する事はあります。その際に、レコード大賞を受賞した事をアピールする手法を用いた事が気になります。

 

 キングレコードさんは、念願のレコード大賞受賞を祝って一新したのか、それとも一つの音楽祭で最優秀賞となった事を話題にするためにデザインを変えたのかは分かりません。

 

 第2回のレコード大賞受賞曲「誰よりも君を愛す」でも、”日本レコード大賞受賞”と印字された2ndジャケットが存在しますが、それほど受賞した事をアピールしたデザインではありません。

 

 

 第2回以降、ビクター所属の流行歌手がレコード大賞を受賞する傾向が続きましたが、第5回に選ばれた「こんにちは赤ちゃん」は、レコード業界と購買する聴き手が“この曲は大賞にふさわしい作品”と認識が一致していたように感じます。

 

 

楽曲分析

 バンドプロデューサー5の分析では、「こんにちは赤ちゃん」はDメジャー(ニ長調)です。

 

 歌唱の音階は、ドレミファソラシドの西洋的な全音階的長音階です。歌の最後のフレーズは主音(レ)ではなく5度の音(ラ)で終止しています。

 

 西洋音楽のテクニックが用いられているためか、当時のヒット曲としては歌謡曲っぽさは感じられません。

 

 「譜面が欲しい」という問い合わせが多かった事を考えると、このサウンドが多くの人の関心を惹きつけた要素だったのかな?と感じます。

 

 

ヒット曲のその後

 「こんにちは赤ちゃん」は、梓みちよさんが昭和天皇に披露された事で、天覧歌謡曲という特別な存在にもなっています。

 披露されたのは1964年5月のようです。

 

 

 初めて天皇陛下に披露された歌謡曲という事で、この出来事は当時話題となったそうですが、永六輔さんの『上を向いて歩こう-昭和歌謡の自分史』によると、梓みちよさんよりも2年前に、昭和天皇に作品を披露された歌手がいる事が告白されています。

 

 

曲情報

1964年 年間8位(邦楽)

 

レコード

 発売元:キングレコード

 品番:EB-1000

 

 

 A面

  「こんにちは赤ちゃん」

  作詞:永六輔

  作・編曲:中村八大

  歌:梓みちよ

  演奏時間:2分21秒

 

  レオン・サンフォニエット

 

  第18回芸術祭参加

 

 B面

  「いつもの小道で」

  作詞:永六輔

  作・編曲:中村八大

  歌:田辺靖雄・梓みちよ

  演奏時間:2分25秒

 

  レオン・サンフォニエット

 

   第18回芸術祭参加

 

 

参考資料

 「こんにちは赤ちゃん」レコードジャケット(1stジャケット、2ndジャケット)

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 『全音歌謡曲大全集3』全音楽譜出版社

 『歌謡曲の構造』小泉文夫

 『上を向いて歩こう-昭和歌謡の自分史』永六輔 飛鳥新社

 「バンドプロデューサー5」