流行時期(いつ流行った?)
村田英雄さんの「白鷺の城」は、昭和39年(1964年)にヒットしました。
日本で発行された雑誌では、この作品がヒットした記録を見つけられません。
意外ですが、アメリカで発売された週刊の音楽雑誌『CASH BOX』に記録が残っています。
1964年5月16日号、日本のシングル盤ランキングの第10位に「白鷺の城」が登場しています(下図の真ん中、LOCAL BEST SELLERSのランキング)。
残念ながら、"どのような調査方法で集計されたランキングであるか?"は全く不明です。肝心の集計期間も不明です。
日本で発売される雑誌でも、数カ月前の集計結果が掲載されていますので、実際にヒットしたのは5月よりも前なのでしょう。
橋幸夫さんの「花の舞妓はん」がランクインしていますので、1964年4月の何週目かのランキングと推測されます。
村田英雄さんは「姿三四郎」も好調ですね。
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Nippon Columbia Co., Ltd.(COLUMBIA の代理); Muserk Rights Management
週間ランキングでベストテン入りしたものの、「白鷺の城」はマイナーなヒット曲と思われます。
姫路市の委託盤だった?
ジャケットには"姫路市選定"と印刷されています。また、タイトルは当時の姫路市長である石見元秀さんが毛筆で書かれています。
レコード会社が企画したのではなく、姫路市がレコード製作を委託したのかも知れません。
姫路市は、キングレコードさんにも委託していたようで、春日八郎さんの「あゝ白鷺城」(オークフリーのサイト)にも"姫路市選定"と印字されています。
どちらも1963年に発売されています。
姫路城・昭和の大修理
1963年6月に発売された「白鷺の城」は、10か月後の1964年4月に急に売れ始めた事になります。
おそらく、姫路城の昭和の大修理が完了したと報道され、注目が集まったのかも知れません。
1964年6月1日に工事完成式典が行われ、一般公開が始まったようです。
城の美しさを讃える歌詞
ヒット曲で"城"が題材となる事があります。
しかし、三橋美智也さんの「古城」(1959年発売)や、氷川きよしさんの「白雲の城」(2003年)で歌われるような、"苔むして朽ちた城跡"として描写される作品ばかりです。
この作品のように、城の優美さを描いた歌詞は、姫路城が現存していなければ描けなかったと思います。
三橋美智也さんの「武田節」のように、1番の後に詩吟が始まります。江戸時代に頼山陽という方が詠んだ漢詩『姫路懐古』の冒頭部分です。
五畳城楼(ゴジョウジョウロウ)
挿挽霞(バンカヲサシハサム)
瓦紋時見(ガモントキニミル)
刻桐花(トウカヲキザムヲ)
姫路の歴史が盛り込まれ、作詩に力が入った作品と感じます。築城以来、人々に愛されて来た城であると感じる事ができます。
太平洋戦争末期は、姫路市も市街地の無差別爆撃を受けています。その際、姫路城は奇跡的に無事だったと語り継がれています。
昭和の大修理を行った鹿島建設株式会社さんのホームページに、姫路城が市民に愛されていたエピソードが紹介されています。
空襲が激しくなった戦争末期には、真っ白な姫路城の大天守をコールタールで黒く染めたわら縄で編んだ網で隠すなどして市民が空襲から守った。引用:第24回 姫路城昭和の大修理―素屋根工事(鹿島建設株式会社さんのホームページ)
「白鷺の城」はおそらく委託盤と思います。なんらかのヒットチャートにわずかでもランクインする程の支持を得た背景には、昔から姫路城が多くの人たちの心に支えとなる誇らしい存在となっていたからだろうと感じます。
村田英雄さんの歌唱も主題にピッタリ、姫路城の偉大さを連想させてくれますね♪
曲情報
発売元:日本コロムビア株式会社
品番:SAS-46
A面
「白鷺の城」
英題:SHIRASAGI NO SHIRO
作詩:星野哲郎
作曲:市川昭介
歌:村田英雄
演奏時間:4分
琴 米川敏子
鼓 堅田喜三郎
太鼓 望月佐吉
コロムビア・オーケストラ
姫路市選定
※タイトル「白鷺の城」は、毛筆で印刷されています。
「(石見市長書)」と注釈が印刷されています。
B面
「白鷺ばやし」
英題:SHIRASAGI BAYASHI
作詩:星野哲郎
作曲:市川昭介
歌:神戸一郎、五月みどり、中尾渉、唐品由美
演奏時間:3分45秒
コロムビア合唱団
三味線 豊藤・豊文
コロムビア・オーケストラ
参考資料
「白鷺の城」レコードジャケット
『CASH BOX』海外誌
「オークフリー」Webサイト
「鹿島建設株式会社」Webサイト