流行時期(いつ流行った?)
三善英史さんの「雨」は、昭和47年(1972年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、5月末に発売されたレコードは、10月から翌年1月はじめにかけてヒットしました。
同時期に流行った曲(昭和47年10月~翌年1月はじめ)
天地真理さんの「虹をわたって」と小柳ルミ子さんの「京のにわか雨」が首位を争い、続いて登場した宮史郎とぴんからトリオさんの「女のみち」が長期間首位を獲得する時期にヒットしています。
若手歌手の活躍が目立つ時期で、南沙織さんは「哀愁のページ」、森昌子さんは「同級生」、麻丘めぐみさんは「悲しみよこんにちは」、郷ひろみさんは「小さな体験」がヒットしています。
1970年代前半のアイドルブームを支えた方々の人気ぶりを感じます。
大人向けの作品では、ちあきなおみさんの「喝采」や内山田洋とクールファイブさんの「そして、神戸」がヒットしています。
洋楽ではギルバート・オサリヴァンさんの「アローン・アゲイン」がヒットしています。
感情を抑えて耐え忍ぶ姿
「雨」は浜圭介さんが作曲されています。この作品がヒットした昭和47年には、奥村チヨさんの「終着駅」、千葉紘子さんの「折鶴」も手掛けられ、いずれもヒットしています。
メロディを聴いて、「これは浜圭介さんの作品だよ。」と言われると、つい納得してしまうくらい、特徴があるメロディを作曲をされる方と感じます。
今の私はできませんが、特定の作曲家の作品を色々聴いて、「なぜそう感じるのか?」、音楽的な事を調べてみたいと思っています。
現段階では、“浜圭介さんらしさを感じるメロディ”は、実は歌詞にあるのではないか?と考えています。
初めに挙げた3曲はいずれも女性が主人公です。どの作品も、幸せな姿では描かれていません。
これは歌謡曲によくある設定ですが、“主人公を傍観しているかのような、客観的な目線で描く歌詞”が気になります。
昭和45年前後に一時代を築いた、青江三奈さんや森進一さん、藤圭子さんや内山田洋とクールファイブさんが表現してきた、恋の辛さや悲しさを歌詞や歌唱で強調するスタイルとは対照的な描写です。
「雨」では、約束の時間に姿を見せない恋人をいつまでも待ち続ける女性が描かれています。雨が降っているのに傘も差さず、人通りが少なくなってもあきらめずに待ち続ける姿だけが描かれています。
本当は感情を表に出して大泣きしたいだろう、と思うのですが、そういった描写はありません。
おそらく、浜圭介さんは歌詞を読んでから作曲で表現される方ではないか?と推測しています。
そして、感情の起伏を表すメロディではなく、第三者の視点で風景として描かれる歌詞にピッタリの雰囲気を持ったメロディを作られる方と感じます。
楽曲分析
「雨」はEマイナー(ホ短調)です。
極力、コードの構成音だけでメロディを作っているような印象を受ける作品です。
歌い出しはEm→Cですので、ミ・ソ・シ→ド・ミ・ソです。
その構成音のみで、♪ミ・ミ・シー・ソ・シ・ソ・ドー・ソーという印象的なメロディを作られています。
もしかすると浜圭介さんは、コード進行を意識したメロディを作られるから、聴き手に演歌っぽさを与えない作品が多いのかも知れません。
気になる作曲家の方ですので、少しづつ調べようと思います。
曲情報
発売元:ビクター音楽産業株式会社
品番:SV-2266
A面
「雨」
作詞:千家和也
作曲:浜圭介
編曲:近藤進
演奏時間:3分52秒
B面
「黄昏の街」
作詞:千家和也
作曲:浜圭介
編曲:馬飼野俊一
演奏時間:2分59秒
参考資料
「雨」レコードジャケット
「you大樹」オリコン
『全音歌謡曲全集21』全音楽譜出版社