流行時期(いつ流行った?)
ラロ・シフリンさんの「燃えよドラゴン」は、昭和49年(1974年)にヒットしました。
同名映画『燃えよドラゴン(ENTER THE DRAGON)』の主題曲です。
昭和48年12月末に発売されたレコードは、翌年3月ごろに最も高い順位を記録していますので、おそらくその頃にヒットしたのだと思われます。
最高順位は20位以下ですが、ロングセラーとなっているため、多くの人たちの記憶に残っている作品と思われます。
同時期に流行った作品(昭和49年3月)
小坂明子さんの「あなた」と殿さまキングスさんの「なみだの操」が首位となっています。
フィンガー5さんがブームとなっていたようで、「恋のダイヤル6700」と「学園天国」がヒットしています。
歌謡曲では渡哲也さんの「くちなしの花」がヒットしています。
Enter The Dragon(1973)-Main Theme
西洋が描く東洋のイメージ
『燃えよドラゴン』は主役が「サンフランシスコ生まれ、香港育ちの中国人俳優」であるブルース・リーさんのヒーロー・アクション映画です。カラテを武器に悪の巨大組織に立ち向かう姿が描かれています。
そのため映画の主題曲も、東洋をイメージした曲調となっています。
東洋らしさは、聴こえてくる楽器の音色で感じられます。メインの楽器はシンセサイザーですが、背後に吹き込まれている“西洋人がイメージするカラテのおたけび”や“拍子木で刻まれるリズム”が、東洋らしさを演出できていると感じられます。
私は中国に行ったことがありませんが、日本人が空想する中国の音楽も、この作品に近いかもしれません。当時の中国のヒット曲も存じ上げませんが、多分、違うと思われます…。
勝手に描く他国のイメージ、この作品でも、作曲された方が知らぬ間に身に着けた中国に対するステレオタイプで音楽が製作されたのではないか、と根拠のない想像をしていますが、聴き手にとっても、頭で描く中国音楽の固定概念と一致する雰囲気を持つ曲調のように感じます。
聴き手に対して、「そうそう、こんな感じ!」というイメージを膨らませるように働きかけているように感じます。この共感が支持された理由かな?と考えます。
聴き手の気分を盛り上げる演奏曲
この時代、歌唱が無い映画主題曲がヒットする事は珍しくはありません。ただし、「白い恋人たち」(昭和44年)や「ある愛の詩」(昭和46年)、「ゴッド・ファーザー」(昭和47年)等、オーケストラが演奏する美しいメロディの作品ばかりでした。
「燃えよドラゴン」は、アクション映画の主題曲で、聴き手の気分を高揚させるメロディが特徴です。こういったタイプの作品がヒットしたのは珍しい事だと感じます。
ヒーローものの映画主題曲で考えると、ジョン・バリー楽団さんの「007のテーマ」(昭和39年)を聴いた時の印象に似ています。
また、数年後にビル・コンティさんの「ロッキー主題曲」(昭和52年)がヒットしますが、こちらもオーケストラの演奏ながら、聴き手の気持ちを熱くさせてくれる演奏曲です。
エレキギターやシンセサイザーといった、新しい電子楽器の登場で、このタイプの作品が誕生する事になったのかも知れません。
楽曲分析
私の「バンドプロデューサー5」の分析では、「燃えよドラゴン」はGマイナー(ト短調)です。自信はありません。
今のところ、使われている音階がよく分かりません。東洋的な音階なのかもしれません。判明しましたら追記致します…。
曲の途中から聞こえてくる、ファミコンの音のような謎のピョンピョン跳ねるようなシンセサイザーの音色は、エマーソン・レイク&パーマーさんの『展覧会の絵』に似た印象を受けます。
「燃えよドラゴン」は、70年代の音楽に大きな影響を与えた楽器・シンセサイザーが出せる音色を取り入れた作品、という性質も備えており、シンセサイザー登場初期の前衛的な試みが楽しめる作品でもあると感じます。
曲情報
発売元:ワーナー・パイオニア株式会社
品番:P-1264W
ワーナー映画が正月に贈る最大の娯楽巨編!話題騒然!アメリカで猛烈な興収記録を作ったオリエンタル・アクションブームの最高作。<ブリット>等数々の名作を生む巨匠ラロ・シフリンのヒット・メロディ
A面
「燃えよドラゴン」
原題:THEME FROM ENTER THE DRAGON
作曲・指揮:ラロ・シフリン
演奏時間:2分23秒
B面
「ビッグ・バトル」
原題:THE BIG BATTLE
作曲・指揮:ラロ・シフリン
演奏時間:3分31秒
参考資料
「燃えよドラゴン」レコードジャケット
「you大樹」オリコン
『永遠のポップス2』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」