歌詞にタバコが登場する歌の数
歌は世につれ、という言葉を聴いた事がありますが、ヒット曲の歌詞に“煙草・タバコ、たばこ”が登場する作品の割合を調べてみたら、下表のようになりました。
下のグラフは曲数ではありません。「サンプルで抽出した全作品のうち、何作品にタバコが含まれているか?の割合」をグラフにしています。
21世紀に姿を消したタバコ
このグラフ、視覚的には「1990年代が最も高かったんだ!」と受け取ってしまいますが、 全体の1%が1.5%になったくらいの差ですので、大した違いではありません。
このグラフで注目していただきたいのは、21世紀に入ってから、極端に登場する頻度が減少している事です。
2010年代は、ついに0%になってしまいました。
歌詞での役割
タバコの歌といえば、ダウンタウン・ブギウギ・バンドさんの「スモーキン・ブギ」(1974年・昭和49年)が真っ先に思い浮かぶのですが、別に1970年代も特異な値ではありませんでした。
この年代は、男性の歌謡曲歌手の作品で、タバコを持つ姿がレコードジャケットの写真となっていた作品が多かった印象もあります。
タバコと言えば、中条きよしさんの「うそ」(1974年・昭和49年)や、八代亜紀さんの「雨の慕情」(1980年・昭和55年)のように、登場人物の心情を、タバコを通して表現する詞が印象に残っています。
主に演歌・歌謡曲のジャンルで用いられる頻度が高い作品なので、過去にさかのぼるほど、割合が多いと思っていましたが、そうでも無いようです。
若い世代の作品でも煙草を扱った作品はありました。小坂恭子さんの「想い出まくら」(1975年・昭和50年)のように、恋人との思い出のエピソードの象徴として、用いられたりしていました。
いしだあゆみさんの「ブルーライト・ヨコハマ」のように、恋人が好きなタバコの香り、と歌詞の一部に自然と用いられている作品もあります。
突然姿を消すタバコ
全体的な推移を見れば、年々タバコが歌詞に登場する機会に変化は無いように感じます。1999年にヒットした宇多田ヒカルさんの「First Love」が流行っていた時も、歌詞に登場するタバコに対して、特に違和感は覚えなかった記憶があります。
しかし、2000年代に入った途端に、タバコが登場しなくなります。
倖田來未さんの「夢のうた」(2006年・平成18年)が、今のところヒット曲でタバコが最後に登場した作品です。
※1970年代以降は、オリコンのCD売上ランキングのみで集計したグラフのため、音楽配信曲のヒット曲には存在するかもしれません。
時代背景
昭和から平成にかけて変化した価値観の代表に、“煙草(タバコ)・喫煙”と“お酒・飲酒”に対する許容があります。
酒とタバコ、どちらも身体に害がある事が報道されるにつれて、有害なものというイメージが強くなったように感じます。
特に煙草の場合は、喫煙者が吐いた煙、煙草から出る煙が、副流煙として他人にも害を与える存在である事から、お酒に比べて、地位の低下に拍車がかかったように感じます。
昭和の頃は、電車でも灰皿が備え付けられた車両があり、新幹線や特急で無くてもタバコが吸えた時代がありました。
私はその時代を知りませんが、電車のなかには、灰皿が前の座席のシートの背面に備え付けられた車輛があった事は記憶にあります。当時はすでに使えないようになっていましたが。
それを考えると、同じものでも、時代によって見方が変わる世の中の価値観の変化は興味深いと感じます。
参考資料
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
『レコードマンスリー』日本レコード振興
「you大樹」オリコン