流行時期(いつ流行った?)
中村雅俊さんの「心の色」は、昭和57年(1982年)にヒットしました。
オリコンや『ザ・ベストテン』のランキングでは、3月に入ってからひと月ほど首位を獲得し続けています。
オリコンではサザンオールスターズさんの「チャコの海岸物語」が、この作品に阻まれて2位止まりとなっています。
「心の色」は前年11月末発売ですので、ヒットするまで4カ月かかった事になります。
注)中村雅俊 - トピックの動画
中村雅俊さんにとって、本当に久しぶりのヒット曲です。
おそらく、製作サイドの方の中にも「良い曲だけど、まさかヒットするとは!」と感じていた人が多かったのではないか?と感じます…(^^;A。
近藤真彦さんや松田聖子さんが大人気のアイドルブームの時代でしたので…。
第一印象がパッとしないヒット曲
私は「心の色」を初めて聴いたときに「?」と感じました。あまり印象に残らないというか、ピンと来ませんでした。
"1回聴いただけでは、頭の中で解釈しきれない楽曲"という事だと思います。数は少ないですが、たまにこの性質の作品がヒットします。
「心の色」がヒットするまで4か月かかった理由にもなると思います。
…ヒット曲には、1度聴けば「なんとなくヒットしそう。」と感じたり、イントロの時点で「絶対ヒットする!」と感じたりするタイプの作品が存在します。
ほとんどのヒット曲がこの性質を持っており、"万人に理解できる音楽"という解釈から、"ベタな"と形容される事があります。
販売する側からすれば、"何度も聴かないと良さが分からない曲"は売りにくい商品なので、自然な流れと思います。
ドラマ挿入歌から主題歌へ
「心の色」は、TBS系TV『われら動物家族』挿入歌です。
視聴した事がありませんので調べてみると、第8話から主題歌に昇格したようです。当初は堀江淳さんの「ルージュ」が主題歌だったようです。
途中で主題歌を入れ替える判断をした背景は興味深いです。
ドラマで「心の色」が放送された事をきっかけに、楽曲の人気が高まった事を示しているようにも解釈できます。
静と動の差が大きい2部構成
1回聴いただけでは良さが分からない理由は、サビまでの歌唱が印象に残らないからです。
控えめな声量で途切れ途切れ歌うフレーズは、聴いていてあまりインパクトを感じません。
伴奏もギター1つで、途中からピアノが加わりますが、雰囲気に変化は起きません。しんみりしたまま進行します。
しかしサビのサンライズから、突然ベースやコーラスが加わり、様々な音が聴こえ始めます。
サビまでの抑えていた部分が引き立つ編曲が行われています。
おそらく、この"静"と"動"の激しい変化が1つの曲のなかで起きているために、1度聴くだけでは分からない要素になっているように思います。
1度聴いて雰囲気が分かる曲は、テンションに変化が無い作品が多いです。「心の色」のように、緊張と緩和の差が激しい構成の作品はあまり存在しないので、解釈するのに時間が掛かるのだと考えます。
こういった作風のヒット曲は、1970年代後半から登場し始めます。フォーク系の歌手に多い印象があります。因幡晃さんの「わかって下さい」(1976)が、第1号でしょうか?
ドラマチックな響きを聴き手に与える楽曲構成であると感じます。現在、バラードと形容される作品に通じる音楽表現をしていると思います。
ヒットのその後
中村雅俊さんは、桑田佳祐さんから「恋人も濡れる街角」(1983)の楽曲提供をされます。
「恋人も濡れる街角」は2度目の楽曲提供で、最初は「マーマレードの朝」という作品だったようです。
「心の色」は「チャコの海岸物語」と同時期にヒットしており、歌番組でお二人が直接会話する機会があったようです。
中村雅俊さんが「提供してもらった前作は売れなかった。」と話したところ、桑田佳祐さんが「もう1回書かせてくれます?」と返答された事で実現したそうです。
不思議な縁を感じるエピソードです。
曲情報
発売元:日本コロムビア株式会社
品番:AH-145-A
A面
「心の色」
作詩:大津あきら
作曲:木森敏之
編曲:川村栄二
演奏時間:4分31秒
TBS系TV「われら動物家族」挿入歌
B面
「さらば涙・・・・・・風の彼方に」
作詩:大津あきら
作曲:鈴木キサブロー
編曲:川村栄二
演奏時間:4分31秒
参考資料
「心の色」レコードジャケット
『ザ・ベストテン』山田修爾 ソニー・マガジンズ
「テレビドラマデータベース」Webサイト
「TVでた蔵」Webサイト