流行時期(いつ流行った?)
Uruさんの「あなたがいることで」は、令和2年(2020年)にヒットしました。
2月に配信が開始され、3月に最高順位となっています。TVドラマ『テセウスの船』の主題歌で、3月は最終回が放送された月です。
<mora~WALKMAN公式ミュージックストア~月間ランキング推移>
年月 | 2/9配信開始 |
2/9配信開始 (ハイレゾ) |
令和02年02月 | 3位 | 70位 |
令和02年03月 | 2位 | 95位 |
令和02年04月 | 4位 | - |
令和02年05月 | 21位 | - |
令和02年06月 | 35位 | - |
令和02年07月 | 78位 | - |
… | ||
令和02年12月 | 61位 | - |
令和03年01月 | 68位 | - |
わずかですが年末年始に再登場しています。紅白歌合戦には出場されておられませんが、日本レコード大賞で特別賞を受賞した事や、年の瀬の音楽番組で「今年のヒット曲」と感じた方々に支持されたのかも知れません。
【Official】Uru 『あなたがいることで』TBS系 日曜劇場「テセウスの船」主題歌
注)Uru Official YouTube Channelの動画
"主人公=男性"の女性バラード
「あなたがいることで」を聴いた時、歌詞の主人公が男性で描かれている事に新しさを感じました。
”女性が歌うバラード調の作品”に該当すると感じていますが、先駆けは松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」(1983)や欧陽菲菲さんの「ラヴ・イズ・オーヴァー」(1983)でしょうか。
1980年代に支持を集め始めた音楽表現と感じます。
中山美穂さんの「You're My Only Shinin'Star」(1988)やプリンセス・プリンセスさんの「M」(1989)など、"歌謡曲"や"ポップス"といったカテゴリーに収まらないサウンドへと発展し、独自のジャンルを確立した音楽表現と捉えています。
2000年代以降では、MISIAさんの「Everything」(2000)やAIさんの「Story」(2005)などが思い浮かびますが、男性の心情を描いた作品は思いつきません…。
uruさんは、ドラマの原作を読んで「あなたがいることで」を作詞されたそうです。
(配信Single「あなたがいることで」特設ページ|Uru Official Website & Official Fanclub 「SABACAN」参照)
表現力が豊かになるコラボ企画
昭和に比べて流行歌の数が少ない時代ですが、「あの曲流行ったね!」と言える歌は、主題歌のようなタイアップ作品が目立ちます。他業種・他分野とコラボした作品です。
ブームとなった映画『アナと雪の女王』(2014)や『君の名は』(2016)、TVアニメ『鬼滅の刃』(2019、2020)は、主題歌や劇中歌がヒットしています。
「ありがとう」(2010)や「にじいろ」(2014)、「365日の紙飛行機」(2015、2016)と、NHK朝ドラの主題歌も存在感があります。
…「女々しくて」(2013)はCMタイアップと呼べるでしょうか…(^^;A。
どの作品も、原作の主題を歌詞に取り入れていると感じます。
小説を音楽にするYOASOBIさんの登場も気になります。
音楽業界が不景気になったからなのか、レコード会社が真面目にタイアップの曲作りに取り組まれていると感じています。
CD売上がバブル期の1990年代は、原作と関連性の薄いタイアップ曲が多かったと思いますので…(>_<)。当時は"人気歌手の新曲"というだけのパターンもあったような…。
作者と聴き手のコミュニケーション
「あなたがいることで」は、製作者がどのような想いで作り、聴き手がどのような気持ちで支持をしたか?を想像しやすい作品です。
作者は原作を理解して詞を書かれていますが、聴き手は原作を知らなくても、伝えようとしている主題を解釈できます。
そして原作を知ると、曲の主人公の境遇や心理を理解しやすくなります。「もし明日に世界が終わったとしても…」という、よく耳にするフレーズを選んだ意図も理解できます。
当たり前かも知れませんが、作り手の想いを100%理解できたり、聴き手に100%伝えられたりする事は出来ないのですね。
"何%かの不明な部分"は、聴き手の想像力にゆだねられます。人によってさまざまな解釈ができる事が流行るための大きな要素と思います。
「あなたがいることで」は、とても理想的なタイアップ曲と感じます♪
流行るきっかけは"分かりやすさ"?
他のエンターテイメント作品や広告とのタイアップは、多くの人の耳に届く可能性を高める効果があります。
しかし、流行る理由にはなりません。流行るには、聴き手が「この曲良いね!」と感じる事が必要です。
ふと耳にした曲を聴いて『良い』と感じる、それは『その曲の何かを理解できている』という事だと考えています。(…私は音楽知識が無いため、"何か"を上手く表現できません!(>_<))
"好き嫌い"は人間の基本的な感情で、曲への評価に連動します。
しかし"好き嫌い"よりも前の段階、感情と呼べるかどうかの"無関心"な人の心に入り込む流行歌には、『誰にでも理解できるシンプルな部分』が備わっていると感じます。
私にとっては、「あなたがいることで」は"初めて聴いた時に「良い曲!」と感じるタイプ"の作品です。
おそらくイントロやUruさんの歌声を聴いて、そう感じたと思います。
歌詞や歌唱力、伴奏への関心は、何度も聴いているうちに高まったような感覚です。
シンプルすぎるとすぐに聴き飽きられてしまう、曲作りのバランスは難しいと思います。この要素を「ベタさ」と呼ぶのかどうか分かりませんが、流行歌にとって必須の要素と思います。
曲情報
作詞・作曲:Uru
編曲:小林武史