流行時期(いつ流行った?)
チャゲ&飛鳥さんの「モーニングムーン」は、昭和61年(1986年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、2月初旬に発売されたレコードは、3月下旬にヒットしています。
ベストテン入りはしていませんが、ロングセラーの売れ方をした作品です。
同時期に流行った曲(昭和61年3月下旬)
渡辺美里さんの「My Revolution」や、河合その子さんの「青いスタスィオン」が首位となっています。
他には、中森明菜さんの「DESIRE」や椎名恵さんの「今夜はANGEL」と、若手の女性が歌った作品が目立ちます。
[MV] モーニングムーン / CHAGE and ASKA
久しぶりのヒット
チャゲ&飛鳥さんの活躍は、やはり1990年代前半が記憶に残ります。オリコンでは1980年に「ひとり咲き」、1981年に「万里の河」がヒットしています。「万里の河」の世界観が独創的すぎたためか、それ以降、シングル盤ではヒット曲が登場しませんでした。
1986年にヒットした「モーニングムーン」は、5年ぶりのヒット曲になります。
曲を聴いて感じるのは、デビュー当初のフォーク調の作品では無くなっている事です。80年代は前半と後半でヒットする作品の音楽性が全く異なりますが、「モーニングムーン」は80年代後半に求められている雰囲気を持つ音楽という印象を受けます。
私は特定のアーティストの作品を聴くタイプではありませんので、詳細な部分を掘り下げる事は出来ませんが、ヒットした作品を聴き比べると、チャゲ&飛鳥さんは時代に合わせて新しい表現を取り入れるアーティストと感じます。
タイアップがない作品
女性アイドルが人気の時代と言えども、「モーニングムーン」はもっと支持を集める事が出来たのではないか?と感じる作品です。
飛鳥涼さんは、翌年にデビューする光GENJIさんの数々の楽曲を製作される事になります。一時代を築くアイドルの作品を手掛けられているので、作られる音楽はその時代に合っていると感じるからです。
「モーニングムーン」がそれほど支持を集めなかったのは、他のメディアとの連携が無かったことも一因と思われます。
1980年代後半になると目立ち始めるのが、テレビコマーシャルとのタイアップです。タイアップは主に化粧品メーカーのCMからイメージソングとして始まりましたが、80年代になると、それ以外の商品の宣伝でも用いられるようになりました。
この時代は、宣伝される商品と流れる歌に関連性が見いだせないタイアップが登場し始めた時期です。
レコードジャケットにはタイアップの情報は何も記載されておらず、せっかく印象も良く耳に残りやすいメロディなのに、惜しいと感じます。
しかし、何かに頼る事をせず、楽曲の良さでヒットさせようとするアーティストの姿勢もうかがえます。
楽曲分析
「モーニングムーン」はF♯マイナー(嬰へ短調)です。聴いていてすごく練られていると感じる作品です。
音階でみると、Aメロがヨナ抜き長音階を短調にした26抜き短音階で、Bメロは自然的短音階、サビの部分は和声的短音階になっています。
次々変化するので、聴いていて不思議な印象を受けます。
また、サビでベース音が半音ずつ上がっていくようなコード進行になっている所も気になります。所々でⅥ→Ⅶ→ⅠやⅢ→Ⅱ♭→Ⅰのように順番に上がったり下がったりする部分が目立ちます。
サビの直前のフレーズでⅡ♭が出て来て、調性には無い音なので不思議な響きになっています。これが裏コードの特性なのでしょうか。
楽曲面で凝った印象を受けます。「ひとり咲き」や「万里の河」と違って、歌詞はあまり印象に残りませんが、イメージ先行の表現に変化している点も、時代に合っていると感じさせてくれます。
曲情報
発売元:株式会社キャニオンレコード
品番:7A0552
A面
「モーニングムーン」
作詞・作曲:飛鳥涼
編曲:佐藤準
B面
「Gently」
作詞・作曲:チャゲ
編曲:栗原正己
参考資料
「モーニングムーン」レコードジャケット
「you大樹」オリコン
『全音歌謡曲大全集6』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」