ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。戦前戦中をけんきゅうちゅう。

「ハートブレーク・ホテル」エルヴィス・プレスリー(昭和31年)

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流行時期(いつ流行った?)

  エルヴィス・プレスリーさんの「ハートブレーク・ホテル」は、昭和31年(1956年)にヒットしました。

※現在では、“ハートブレーク”ではなく“ハートブレイク”と表記されますが、当時は“ハートブレーク”でした。

 

 音楽雑誌『ダンスと音楽』のSP盤(蓄音器で再生する78回転盤)のヒットチャートでは、昭和31年の8月~11月にかけて5位圏内にラインクインしています。おそらく、この時期に最も流行したと推測されます。

 

 EP盤(電気式蓄音器で再生する45回転盤)は7月に発売されていますが、当時普及し始めた頃だったようです。

 『ダンスと音楽』がEP盤を集計を始めるのは翌年以降のため、EP盤の流行規模は不明です。

 

集計日付 SP盤の順位 EP盤の順位
昭和31年06月 9位
昭和31年07月 7位
昭和31年08月 2位
昭和31年09月 3位
昭和31年10月 4位
昭和31年11月 3位
昭和31年12月 6位
昭和32年01月 8位 4位
昭和32年02月 10位 7位
昭和32年03月 15位 圏外

※『ダンスと音楽』のランキング推移

 

同時期に流行った作品

 『ダンスと音楽』は、洋楽盤のランキングしか掲載しておりませんので、どのような歌謡曲が流行っていたかは分かりません。

 

 スリー・サンズさんの「誇り高き男」ドリス・デイさんの「ケ・セラ・セラ」パーシー・フェイス楽団さんの「シンシアのワルツ」などがヒットしています。

 ヴィクター・ヤング楽団さんの「エデンの東」もロングセラーとなっています。

 

 前年(昭和30年)に登場したロックン・ロールの流行が続いており、ジーン・ヴィンセントさんの「ビー・バップ・ア・ルーラ」も、下位の順位ですが人気を得ています。

 

 街頭テレビが人気で、家庭に普及していない時代のため、映画やラジオから流れる音楽が流行の発信源になっていたようです。

 


Elvis Presley - Heartbreak Hotel (Audio)

 

ロックン・ロールとして紹介されていない作品

 エルヴィス・プレスリーさんが歌うこの作品が、ロックン・ロール人気の火付け役になったと捉えています。

 

 しかし、「ハートブレーク・ホテル」の歌詞カードの解説には、ロックン・ロールやロカビリーという単語は登場しません。

 

 エルヴィス・プレスリーさんの事を、

 『ウエスターン・ミュージック界に彗星のように登場』、

 『亡きハンク・ウイリアムスの跡を襲う有望な新人』と紹介しています。

 

 作品についても、

 『リズム・アンド・ブルースの雰囲気を新しくとり入れウェスターン・ミュージック界に新鮮な魅力を導入』と表現しています。 

 

 

 現在ではロックン・ロールに該当する作品と定義されているため、 

  R&B + カントリー = ロックン・ロール

 という事になりそうです。

 

 

日本語カバー盤

 小坂一也とワゴン・マスターズさんが、1番は英語、2番以降は日本語訳でカバーされています。レコードには「56.10」と印字されていますので、10月に発売されたと思われます。

 そして、この年の紅白歌合戦に出場し、「ハートブレーク・ホテル」を歌唱されています。

 

 小坂一也さんは洋楽を日本語カバーで歌う歌手として活躍されていました。担当するジャンルはカントリー系の作品が多かったため、その流れでこの作品を日本語カバーする事になったのだと思われます。

 

 カントリーの日本語カバー歌手として活躍されていたため、2年後に登場するロカビリー歌手とは音楽性が異なるかも知れません。

 

 ハートブレーク・ホテル(傷心のホテル)は、恋人の女性にフラれた男の子が1人で泊まる場所として描かれています。

 主人公が失恋の悲しみに暮れるためにそこへ向かう様子が歌われています。

 

 最後の5番は、「もしも、あなた(曲を聴いている人)が失恋で同じ悲しみに暮れているとしたら、その悲しみを胸に抱いて生きるのか、立ち直れないくらい傷ついているから死を選ぶのか。それはあなたの好きなようにしたら良い。」という意味になっています。

 

 日本の歌謡曲では表現されなかった価値観が突然出てくるため印象に残りました。日本語カバーは、海外の価値観を日本にもたらす役割を持っているように感じました。

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、エルヴィス・プレスリーさん盤も小坂一也さん盤も、E♭メジャーです。

 

 4分の4拍子ですが、1拍が3連符になっていたり、ターッタとなっていたりするメロディラインが特徴だと感じます。一本調子でなく変化の激しい点がリズム・アンド・ブルースの特徴なのでしょうか。

 

 また、伴奏の演奏が必要最小限に削っていると感じるくらい、聴こえてくる音が少なく、間奏のピアノや最後のウッドベースの音色も印象に残る作品です。

 

曲情報

 エルヴィス・プレスリーさん盤(EP盤)

 

  発売元:日本ビクター株式会社

  品番:ES-5042

  A面

   「ハートブレーク・ホテル」

   原題:HEARTBREAK HOTEL

 

  B面

   「たゞひとりの男」

   原題:I WAS THE ONE

 

 小坂一也とワゴン・マスターズさん盤(EP盤)

 

  発売元:日本コロムビア株式会社

  品番:SB-6

  A面

   「ハートブレーク・ホテル(傷心のホテル)」

   原題:HEARTBREAK HOTEL

   訳詞:服部レイモンド

   作詞・作曲:アックストーン、ダーデン、プレスリー

   編曲:服部レイモンド

   歌:小坂一也とワゴン・マスターズ

 

  B面

   「サヨナラの唄」

   原題:THE JAPANESE FAREWELL SONG

   作詞:奥山靉

   作曲:モルガン

   編曲:馬渡誠一

   歌:旗照夫

 

   コロムビア女声合唱団

   コロムビア・オーケストラ

 

参考資料

 「ハートブレーク・ホテル」エルヴィス・プレスリー レコードジャケット

 「ハートブレーク・ホテル」小坂一也とワゴン・マスターズ レコードジャケット

 『洋楽シングルカタログ RCA編』オールデイーズ

 『ダンスと音楽』ダンスと音楽社

 『永遠のポップス①』全音楽譜出版社

 「バンドプロデューサー5」