流行時期(いつ流行った?)
GO-BANG'S(ゴーバンズ)さんの「あいにきて I・need・you!」は平成2年(1990年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、平成元年12月末に発売されたCDは、翌年1月~3月下旬にかけてヒットしています。
注)GO-BANG'S - トピックの動画
同時期に流行った曲(平成2年1月~3月下旬)
山下達郎さんの「クリスマス・イブ」、工藤静香さんの「くちびるから媚薬」、LINDBERGさんの「今すぐKiss Me」などが首位となっています。
その他には、オヨネーズさんの「麦畑」、美空ひばりさんの「川の流れのように」、徳永英明さんの「夢を信じて」、ドリームズ・カム・トゥルーさんの「笑顔の行方」などがヒットしています。
それぞれの作品に共通性は見出せませんが、 どのジャンルの作品も歌の力というか、勢いが感じられる作品が多いと感じます。
♭Ⅶの和音
楽譜を見ると一目で分かりますが、この作品のコード進行には、Ⅰ→♭Ⅶの繰り返しが多用されています。
タイトル名を繰り返すメロディでは用いられていませんが、イントロやAメロではⅠ→♭Ⅶが繰り返されています。
この作品は聴いて感じられる通り長調ですが、♭Ⅶは調性外の和音です。ですが、同主調の短調に存在する和音で、借りる事が出来るコードのようです。
聴いた感じでは、短調の悲しめの響きを感じませんし、長調の明るさのまま続いているように思います。
長音階の作品に半音下がる音が入るジャンルは、1950年代に誕生したロックンロールが有名かも知れませんが、この作品も音楽バンドの作品ですので、その時代の音楽を意識して製作されているかも知れません。
GO-BANG’Sさんについてはほとんど詳しくありませんが、B面曲に、コニー・フランシスさんの「ボーイ・ハント」(1961年)を、新たな訳詞でカバーされておりますので、おそらくオールディーズの音楽を今風に再現するバンドとして活動されていたのだと思われます。
そのため、ザ・ヴィーナスさんと似たような音楽性を備えており、1980年代のヒット曲でうかがえる、1950年代のアメリカン・ポップスを回顧する路線に通じる作品だと感じます。
当時活躍された方では、シャネルズさんもこの路線に該当すると考えます。
損か得かの恋愛感情
「あいにきて I・need・you!」は、歌詞が今風の作品であると感じます。途中で曲の雰囲気が短調に変わったように感じるパートがありますが、その時に歌われる心情がこの作品で最も印象に残ります。
それは、「恋人から私に対して行動を起こすのが当たり前と思う」、「私の方から恋人に愛している事を伝えてばかりなのは不公平だ」といった心境です。
「耐える事は不自然だ」とも歌っており、これまでの流行歌で歌われて来た価値観に違和感があると、女性側から主張している事に新しさを感じます。
流行歌でたくさん描かれて来た愛に関する心情は、無垢で見返りを求めない愛情が多いですが、現実はそういった愛に巡り合う事は少ないと思います。この作品が歌う愛情が等身大の愛と感じます。
作品は全体的に可愛らしさを感じる作品ですが、本質を突くような表現が入っている所が魅力だと感じます。
「あいにきて I・need・you!」のように、自分の抑えきれない感情をそのまま表に出すような女性が登場するのは、80年代後半~90年代初めの頃に目立つような印象があります。
同時期にヒットした「今すぐKiss Me」にも共通する価値観がうかがえます。
楽曲分析
「あいにきてI・need・you!」はBメジャー(ロ長調)です。間奏はGメジャー(ヘ長調)に転調しています。
全音階的長音階ですが♭が付く部分も多く、ロックっぽさを感じるメロディになっていると感じます。
何度も繰り返し、「会いに来てほしい!」と歌っているので、本当は淋しくて恋しい気持ちだと思いますが、あえて明るく表現している所も面白く感じます。
曲情報
発売元:株式会社ポニーキャニオン
品番:PCDA-00044
A面
「あいにきて I・need・you!」
作詞:森若香織
作曲:森若香織
編曲:白井良明
アルペンスキー'89~'90 TV CFソング
B面
「ボーイハント」
作詞:HOWARD GREENFIELD
日本語詞:森若香織
作曲:NEIL SEDAKA
編曲:白井良明
参考資料
「あいにきて I・need・you!」CDジャケット
「you大樹」オリコン
『全音歌謡曲大全集7』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」