ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットするのか?は証明できないと思ってます。結果論であれこれ考えてます。

「六甲おろし」(昭和60年、平成15年)

いつ流行った?

 阪神タイガースの球団応援歌「六甲おろし」は、長期間優勝しなかった阪神が優勝した年にテレビ等で流れ流行します。

 

 ヒットチャートのような形式的な記録には残らない、特殊な流行り方をする作品です。

 

 私は1985年優勝の盛り上がりを知らない世代ですが、2003年は凄かった印象があります。

 

 


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注1)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 JVCKENWOOD Victor Entertainment Corp.; Muserk Rights Management

注2)立川清登(たちかわすみと)さん歌唱の動画です。

 

 

 私は関西人で家族に阪神ファンがいるので、野球に関心が無くてもファン心理を垣間見る事ができます。負け試合では阪神の攻撃回しか見ない、というストレス軽減法があるようです。

 

    今年(2022年)は不穏な気配が凄かったです。シーズンが始まる前に監督が辞める宣言する、開幕初戦は勝てる点差なのに逆転負け、そしてそこから始まる記録的な連敗・・・コワイコワイ(>_<)。

 

 

長年耐え続けた思いが爆発

 この年、2位のチームが負けた事で阪神の優勝が確定しました。優勝が確定した甲子園球場の生中継を家族で見ていました。

 

 テレビではみんなが優勝を喜んでいる姿が映っているのに、やけに静かだったので「アレ?嬉しくないの?」と思って顔を見たら、流れる涙を拭う事なくただ画面を見つめていました・・・(^^;A。

 

    私もそうですが、1990年代の万年Bクラスの暗黒時代しか知らない世代にとって、阪神優勝はあり得ない事、信じられない出来事と捉えていましたので気持ちは理解できました。

 

 

    おそらく1985年の優勝とエネルギーの質が異なるのだろうと思います。196,70年代の阪神はAクラスの年が多いです(阪神タイガース 年度別成績 (1936-2022) | NPB.jp 日本野球機構)。

 

   しかし巨人がV9を達成していた巨人の黄金時代です。おそらく同リーグの他球団ファンが、巨人の優勝を阻止してくれる事を願う気持ちは、1990年代の阪神ファンが蓄えていた熱量と同じくらいだった事は想像しやすいです。

 

 V10を阻止した中日ドラゴンズです。この年に板東英二さんの「燃えよ!ドラゴンズ」(1974年)が発売されています。(・・・歌詞に阪神と横浜(当時は大洋)を連想させる単語も登場しますが、やはり巨人に対する敵意がむき出しですね(汗))

 

 ライバル球団の連覇は阻止された、そうなると「・・・阪神はいつ優勝すんねん!」というファン心理に変化し、想いがさらに積もり始めたのだろうと思います。それが解消されるのは10年以上経った1985年・・・待ちに待ったと爆発する心理は理解できます。

 

 桂春蝶さんの「たのんまっせ!阪神タイガース」(1984年発売)によると、1973年は阪神対巨人の最終戦で、勝った方が優勝!という状況だったようですが9対0で阪神が完敗だったようです。

 

 1973年の最終戦で阪神ファンがグラウンドに降りて暴徒化した報道を見た事があります(桂春蝶さんは3日間寝込まれたそうです)。

 

 

積年の想いが無ければエネルギーは生まれない?

 阪神タイガースが優勝したのは2005年が最後です。2003年に比べるとこの年の優勝はあまり印象に残っていません。

 

    もし今年(2022年)優勝すれば、2003年と同じ"18年ぶりの優勝"になります。しかし、1985年や2003年のような盛り上がりが生じる事は無いと思います。

 

 年数だけで考えれば充分ですが、ライバルチームの黄金時代を打ち破る事を願っていたエネルギーや、自チームの暗黒時代を克服する事を願ったファンの想いに似た積み重なる熱源が見当たらないからです。

 

 愛唱され続ける「六甲おろし」は普段は目に見えないファン心理を表面化する珍しい作品と思います。

 

 もしかしたら、今後は野球チームの応援歌ではなく他の分野で似たような現象が起きるかも知れないと考えています。

 

 

参考資料

 「六甲おろし」CDジャケット

 「たのんまっせ!阪神タイガース」レコードジャケット

 阪神タイガース 年度別成績 (1936-2022) | NPB.jp 日本野球機構