ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。戦前戦中をけんきゅうちゅう。

「誘惑」GLAY(平成10年)

流行時期(いつ流行った?)

 GLAYさんの「誘惑」は、平成10年(1998年)にヒットしました。

 

 オリコンランキングによると4月末に発売されたシングルCDは、翌5月から6月初めにかけてベストテン入りしています。

 

 「SOUL LOVE」と2曲同時に発売されています。公式サイトによると、3月5日の記者会見で事前に同時発売をする事を伝えていたようです(GLAY公式サイト)。

 

 勢いのある人気歌手の発表は、当時の情報番組の芸能コーナーで報道され、かなり話題になったのだろうと思います。

 

 


www.youtube.com

注)GLAY 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

"音楽プレーヤーのタイアップ"は特別

 GLAY公式サイトさんでは、「誘惑」の制作秘話も掲載されています。

 

レベッカがリバティというステレオの宣伝をやったり、BUCK-TICKがラジカセのCMに出てたあの雰囲気を想像して、だったらバラードなんかより、速くて一発でノックアウトできるようなヤツがいいなあとか(笑)。(引用:GLAY公式サイト

 

    この記事を見て気付きました。ドラマ・映画のタイアップは、主題歌・挿入歌が引き立て役になりますが、音楽関連の商品CMの場合、"タイアップ曲が主役"になれるんですね♪

 

 

刺激を求める心理

 この時期のヒット曲の歌詞には、"刺激を求める価値観"が目立つように感じます。"日常が退屈"と欲求不満の感情が表現されたりもしますが、この年代だけが特別という訳では無いと思います。

 

 満たされない若者の心理は、ヒット曲が若者の文化となった1980年代から表現され続けています。(その理由を、"世の中や社会がおかしい"と転嫁しているように解釈出来る価値観は、1990年代の特徴かも知れません・・・。)

 

 先ほどの制作秘話で、「誘惑」を”速くて一発でノックアウトできるようなヤツ"と表現されていますが、当時求められていた欲求不満を満たすようなノリの良い作品だったのだろうと思います。

 

 何度か聴いているうちに良さに惹かれるのではなく、1回聴くだけで弾かれるアップテンポな作品。歌詞も背徳を感じさせる内容で、理性より感情の赴くままの衝動を主題としているように感じます。

 

 「さざんかの宿」(1983年)や「ホテル」「愛人」(共に1985年)など、1980年代中頃の歌謡曲で題材にされた心理に通じる主題です。

 

 翌年にヒットする椎名林檎さんの「本能」(1999年)にも通じる気がします。

 

 人とのつながりを容易にするデジタルの発達で、"従来の世代よりもコミュニケーションに気を遣うような世代の欲求不満"と感じたりもします。気を遣う日々の生活で、抑圧された感情を開放してくれる作品だったのかも知れない、と解釈しています。

 

 

話題作りは恩返し?

 音楽業界はバブル景気が一般的な業種とズレているようです。1998年はCDバブル崩壊の兆しが見え始めた年と思います。

 

 各社は予兆を察していたのか、限定生産や流行歌手の連続リリースといった企画が目立ち始める年です。

 

 限定生産も連続リリースも"ファンの購買意欲に期待する、後ろ向きな新商品企画"と捉えています。しかし、1980年代に行われた"B面に異なる作品を収録する"という商法は行われていませんので健全と感じます。

 

 

 GLAYさんの2曲同時発売の企画がバンドメンバーから生まれたのか、会社から生まれたのか分かりませんが、前向きに取り組まれたのだろうと感じます。

 

 「誘惑」と「SOUL LOVE」には、YOSHIKIさんが創設されたメジャーレーベルのプラチナムレコードに所属するバンドの「PLATINUM RECORDS NEWS」がシングルに同梱されています(Dearさん、Breathさん、RAMARさんの情報が記載されています)。

 


 人気となった歌手のシングル盤に、同じレーベルに所属するバンドの情報が入っている例はあまり記憶にありません。(宣伝の手法で考えると、1960年代以前によく見られる、人気歌手のB面に別の歌手が吹き込んでいる盤のような感覚でしょうか・・・。)

 

 通常ならば、自らが今までに発売したアルバム・シングルの情報しか掲載しないと思います。

 

 

 人気歌手に上り詰めた時期に「PLATINUM RECORDS NEWS」を挟んだ事も気になります。GLAYさんが、所属レーベルへの恩返しの気持ちで行ったのかな?と考えたりもします。

 

 

曲情報

 品番:PODH-7020

 PLATINUM RECORDS, MARKETED BY POLYDOR K.K., DISTRIBUTED BY PolyGram K.K., Made in JAPAN KY STEREO

 発売日:98.4.29

 

 トラック1

  「誘惑」

  written & composed by TAKURO

  arranged by GLAY / 佐久間正英

 

 トラック2

  「Little Lovebirds」

  written & composed by TERU

  arranged by GLAY / 佐久間正英

  

 トラック3

  「誘惑 instrumental」

 

 

参考資料

 「誘惑」CDジャケット

 「SOUL LOVE」CDジャケット

 「you大樹」オリコン