流行時期(いつ流行った?)
高橋真梨子さんの「はがゆい唇」は、平成4年(1992年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、1992年5月中旬に発売されたシングルCDは、翌6月下旬から8月上旬にかけてベストテン入りしています。
シングル盤では「桃色吐息」(1984年)以来のヒット曲です。
注)高橋真梨子 公式アーティストチャンネルの動画
描かれない部分が聴き手の想像を豊かに
歌の主人公は人生経験が豊富なのかも?と感じる歌詞です。その理由は、"自分の感情を胸の内に秘める事ができる"と感じさせる描写があるからです。
主人公の心を埋めようと口づけする描写がありますが、主人公にとっては的外れのようです。タイトルにもなっている、この作品の主題です。
本当なら思わず心情を口にしてしまう場面と解釈できますが、「間違えている」と思うだけで相手に伝える描写はありません。
"相手がどのような人物かを描かない事"は、『「はがゆい唇」がどういった場面の心境なのか?』を聴き手の想像させる作詞と思います。
なぜ、主人公は違うと感じるなら「違う」と伝えなかったのでしょう?
この理由も描かれていません。("相手の事を想う価値観"が主流の昭和ならば、伝えていたと思います。)
おそらく生活が豊かになった平成には、個人のプライドが芽生えはじめ、"自分が満たされる生き方を重視する価値観"が支持され始めたように感じます。
「まちぶせ」(1981)や「待つわ」(1982)のように、本心をあえて明かさない心境を「はがゆい唇」でも読み取れます。
後半に仮面という表現が登場します。恋愛関係に発展しても、お互いに明かさない(明かせない?)"心の壁"が主題になっていると感じます。
聴き手に色々考えさせる歌詞を生み出せる阿木燿子さんはスゴイ!と感じます。
分かりやすいメロディ?
この作品は、イントロを聴いただけで「良い曲!」と感じるタイプの作品と思います。音楽知識のない私が感じるので、その理由は”分かりやすさ”と思います。
歌詞は読解力が必要で色々と考察できる作品ですが、音楽的にはシンプルかも知れません。
メロディも昭和のヒット曲のAメロ、Bメロ構成?で覚えやすく、ボーカルの音域もほぼ1オクターブです。(くちびるやくちづけの箇所だけ、オクターブを越えて最高音になります。)
カラオケで歌いやすい事を意識して作曲されているかも知れません。
おそらく高橋真梨子さんにとっては、歌唱するには物足りない作品だろうと思います。
しかし、聴き手には主人公の感情をストレートに伝えてくれる歌唱で、曲の世界観に引き込まれます。
平成以降は"ヒット曲=若者の文化"になります。10代、20代が支持層かも知れませんが、「はがゆい唇」のような大人な作品も登場してほしいと感じます。
曲情報
品番:VIDL-10236
発売元:ビクター音楽産業株式会社
発売日:92.5.16
「はがゆい唇」
作詞:阿木燿子
作曲:羽田一郎
編曲:岩本正樹
TBS系T.V.”眠れない夜をかぞえて”主題歌
c/w
「~LOVERS BELL~心のささやき」
作詞:大津あきら
作曲:桑村達人
編曲:林有三
NTT/LOVERS BELLキャンペーン・イメージソング
※トラック3、4はオリジナルカラオケ
(日本レコード協会の有料音楽配信認定によると、2002年12月中旬に配信が開始され、2017年1月にゴールド認定(10万ダウンロード)されています。)
参考資料
「はがゆい唇」CDジャケット
「you大樹」オリコン