流行時期(いつ流行った?)
アーサー・キットさんの「ウシュカ・ダラ」は、昭和29年(1954年)にヒットしました。
『ダンスと音楽』のトップレコード順位によると、7月から9月にかけて首位を獲得しています。
<『ダンスと音楽』SP盤売上ランキングの推移>
年月 | 順位 |
昭和29年06月 | 4位 |
昭和29年07月 | 1位 |
昭和29年08月 | 1位 |
昭和29年09月 | 1位 |
昭和29年10月 | 2位 |
昭和29年11月 | 4位 |
昭和29年12月 | 9位 |
昭和30年01月 | 15位 |
注)Eartha Kitt 公式アーティストチャンネルの動画
現在では「ウスクダラ」というタイトルで知られる作品です。
江利チエミさんが日本語カバー盤した「ウスクダラ(トルコ譚)」のタイトルが採用されたのだと思います。
(この曲の原題が「USKA DARA - A TURKISH TALE」のため、"トルコ譚"という副題が付いていますが省略されたようです。)
この年に発売された、電蓄で再生できる4曲入りEP盤が9月に発売されています。
トルコ民謡・ウスクダラ
耳にする機会の無い"ウスクダラ"というフレーズ。曲中のセリフではトルコにある小さな町の名前と紹介されています。
トルコ語ではÜsküdar、Googleマップではユスキュダルと表記されています。イスタンブールの隣なんですね。
トルコは、ヨーロッパ大陸とアジア大陸の間に位置し、南には中東諸国という地理のためか、ヒット曲の世界でも存在感があります。
現代史では外交や戦争といった政治的な問題が目立たないため、アメリカも"純粋な異国情緒"をかき立てる作品として「ウシュカ・ダラ」を企画したのではないか?と想像しています。
日本からも遠く離れた国ですので、似た感覚で作品が支持されたのだろう、と解釈しています。
フランスでは、異文化の音楽が支持され始めた1998年にTarkanさんの「Şımarık 」がヒットしています。
「ウシュカ・ダラ」、「Şımarık 」とどちらの作品でも、演歌・歌謡曲的な節回しが存在する事が印象的です。
日本人なのでひいきしてしまいますが、どちらかというとアジアの音楽に感じます(^^;A。
1950年代のトルコ音楽ブーム
トルコ語で歌われた民謡「ウシュカ・ダラ」。
この曲だけのブームで終わったか?というとそうでもないみたいです。
同年末にはフォア・ラッズさんやジョー ・フィンガーズ ・カーさんの「イスタンブール」がヒットしています。
また、1957年にラルフ・マーテリー楽団さんの「シシュ・カバブ(串かつソング)」がヒットし、トルコ音楽への関心が薄れていない印象を受けます。
日本では庄野真代さんの「飛んでイスタンブール」(1978)がありますが、イメージ重視で音楽性は全く関係がありません。しかし、聴き手に"異国情緒を連想"させるという目的は達成できていると感じます。
おそらく、1950年代のアメリカ人も似た気持ちで作品を支持していたのだろう、と推測しています。
昨今の流行で比較すると、ルイス・フォンシさんの「デスパシート」(2017)がヒットして以降、カミラ・カベロさんの「ハバナ」(2018)や「セニョリータ」(2019)と、カリブ海の音楽が支持される現象に似ていると感じます。
ロス・デル・リオさんの「恋のマカレナ」(1996)だけで収束しなかったスペイン語圏の音楽ブームです。
自国が持たない音楽への関心が高まる時期、というのは定期的にやって来るのかな?と考えています。
いつになるか分かりませんが、日本の音楽が世界的にヒットする日が再び来るのは現実的な気がしています♪
曲情報(EP盤)
発売元:日本ビクター株式会社
品番:EP-1027
A面
「ウシュカ・ダラ(トルコ語)」
原題:USKA DARA - A TURKISH TALE
「ウェディング・ベルが盗まれた(英語)」
原題:SOMEBODY BAD STOLE DE WEDDING BELL
B面
「アンヘリート・ネグロス(スペイン語)」
原題:ANGELITOUS NEGROS
「ポルトガルの四月(佛語)」
原題:AVRIL AU PORTUGAL
参考資料
「ウシュカ・ダラ」レコードジャケット
『ダンスと音楽』モダン・ダンス社
『洋楽シングルカタログ RCA編』オールデイーズ