当時の曲名は「田舎のバス」
中村メイコさんの「田舎のバス」は、昭和30年(1955年)に発売されました。SP盤で品番はV-41347です。
この作品は「田舎のバスで」と表記されたレコード(オークフリーのサイト)が存在します。正しいタイトルで印字された盤(オークフリー)も存在しますがどちらが先にプレスされたかは分かりません。
後年に発売された"懐かしのシリーズ"のEP盤では「田舎のバスで」(オークフリー)と誤植表記が採用されています。この経緯は全く分かりません…。
「霧のロンドン」のように、肝心の作品名がブレてしまうのは1950年代特有の現象ですね…(^^;A。
曲が自然と流行って、タイトルは重視されなかった時代と察します。
国立国会図書館や三木鶏郎資料館さんの記載では「田舎のバス」となっています♪
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Victor Entertainment, Inc.; Muserk Rights Management
1950年代の"コミックソング"史
「田舎のバス」は、三木鶏郎(三木トリロー)さんが作曲されています。
三木鶏郎さんは、戦後GHQの占領時代に放送されていたNHKラジオ番組『日曜娯楽版』で人気を得られています。
ラジオ番組では"冗談音楽"というコーナーが人気となり、数々の音楽作品が発表されたようです。
特に「僕は特急の機関士で」(1951)と「毒消しゃいらんかね」(1953)は、ヒット曲として語り継がれていると感じます♪
この番組は、社会風刺が痛烈だった事が聴取率の高かった要因と語り継がれています。NHKでそのような番組が放送されていたなんて、今となってはオドロキですね♪
感情豊かな"コミックソング"
「田舎のバス」は、そのラジオ番組が終了した翌1955年に発売されています。
そのため前述の2曲のように、"番組とのタイアップ"で人気を得たのかは判断しづらい作品です。
ただ既に実績を残されているので、当時は「あぁ三木鶏郎さんの新曲ね。」という感じで容易に受け入れられたのだろうと思います。
流行歌手は歌唱力で感情を表現するのが一般的です。そして悲しみの感情が強調される事が多く、楽しい気分はあまり強調されません。(何故でしょうね?)
「田舎のバス」は普通の流行歌では描かれない感情が登場します。ニッコリと笑うような歌唱があったり、セリフでは嫌々つぶやいたりと、主人公の気持ちを手に取るように理解できる作品です。
またセリフでは、バス内にいるときは丁寧な標準語で話しながらも、外に出るとすぐ地元の話し言葉が出てしまうという、建前の使い分けも描かれています。
また、バスが故障して乗客が不満でも、堂々と「私のせいじゃない」という態度を取る主人公像も、三木鶏郎さんの風刺のまなざしが活きていると感じます。
EP盤も発売されていました!
邦楽のEP盤は1950年代中期に誕生しました。電蓄で再生できるレコードです。
ビクターさんの場合は、品番が「VS-」で始まります。
ビクターさんの1956年度のレコード総覧に掲載されています(下図の右ページ)。レコード月報ではありませんので、発売日は分かりません。
EP盤「田舎のバス」(オークフリー)は、品番がVS-3。
B面曲がSP盤とは違いますが、本当に初期中の初期のEP盤ですヽ(´∀`)ノ♪
あとがき
ヒットチャートが存在しない1950年代以前のヒット曲は、とても情報が少ないです。
おそらく"存在するのが当たり前"で、「わざわざ記録する必要は無いだろう」と認識される時代だったと捉えています。
当時の輝きをお伝えできるような記事にしたいものですが、調査には時間がかかります。
取り上げる頻度が少ないかも知れませんが、よろしくお願いいたしますm(_ _)m♪
曲情報
SP盤
発売元:日本ビクター株式会社
品番:V-41347
A面
「田舎のバス」
作詞・作編曲:三木鶏郎
ビクター・オーケストラ
B面
「酔っぱらっちゃったの」
作詞:中村メイコ
作編曲:三木鶏郎
ビクター・オーケストラ
EP盤
発売元:日本ビクター株式会社
品番:VS-3
A面
「田舎のバス」
作詞・作編曲:三木鶏郎
ビクター・オーケストラ
B面
「メイコの電話」
作詞:井田誠一
作編曲:服部良一
ビクター・オーケストラ
参考資料
『新版 日本流行歌史(中)1938~1959』社会思想社
『SPレコード60,000曲総目録』アテネ書房
『ビクターLP・EPレコード総覧1956』日本ビクター株式会社
「三木鶏郎資料館(http://www.mikitoriro.jp/)」Webサイト
「オークフリー」Webサイト