ヒット曲けんきゅうしつ

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「大利根無情」三波春夫(昭和34年発売)

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 歌謡曲+浪曲の"歌謡浪曲"

 三波春夫さんの「大利根無情」(おおとねむじょう)は、昭和34年(1959年)に発売されました。

 

 三波春夫さんの作品は、東京オリンピックや大阪万博のテーマソングが語り継がれています。「大利根無情」は、本来の三波春夫さんが表現するジャンルの音楽と感じます。

 

 レコード歌手としてデビューされる前は、浪曲師がご職業だったそうです。(浪曲師時代の三波春夫さんに関する資料は、私は一度も見た事がありません。レコード歌手のスカウトが来たという事は、"いい声をしている"とか、"歌が上手い"等の評判があったのだと思います…(^^;A。)

 

 そのため、「大利根無情」は歌謡曲ではなく、歌謡曲+浪曲の歌謡浪曲に該当します。

 

 この作品がヒットした事で、三波春夫さんの歌謡浪曲作品がシリーズ化されるようになったと思います。『瞼の母』など、昭和初期に活躍された長谷川伸さんの戯曲が主な題材となっています。

 

<『ミュージック・マンスリー』にランクインした三波春夫さんの歌謡浪曲>

発売年 品番 曲名
1959 NS-105 大利根無情
1959 NS-139 忠太郎月夜
1960 NS-177 沓掛時次郎
1960 NS-180 一本刀土俵入り
1960 NS-320 安宅の松風
1962 NS-512 曽我物語

 

 三波春夫さんの歌謡浪曲では「俵星玄蕃」(正式名称:「長編歌謡浪曲 元禄名槍譜 俵星玄蕃」)(1964年発売)が最も有名ですが、『ミュージック・マンスリー』にはランクインしておりません(>_<)。

 

 

 


大利根無情 三波春夫

注1)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 TEICHIKU ENTERTAINMENT(テイチクレコード の代理)

注2)発売当時の音源ではありません。実際にヒットした盤では、セリフはそれほど感情が表に出ていません。この音源のように感情むき出しの大げさなセリフにはなっておりません…(^^;A。

 

 

"演技力"も求められる歌謡浪曲

 "歌が上手い"、"声が良い"だけでは歌謡浪曲を歌いこなす事は出来ないと感じます。間奏で語られるセリフが重要になるからです。

 

 まるで登場人物になりきったかのような語り口、これが表現出来ているかどうかで、作品の完成度が変わります。歌謡浪曲を鑑賞する際の最も重要な部分と感じます。

 

 橋幸夫さんもデビューしてからずいぶん経った頃に、歌謡浪曲を思わせる「殺陣師一代」(1966)を発売されていますが、セリフ部分に物足りなさを感じます…(>_<)。

 

 歌手が表現できない場合は、セリフだけ別の人が吹き込む場合があります。美空ひばりさんの「お島千太郎」(1965)では、林与一さんがセリフを担当されています。

 

 浪曲ではありませんが、戦前にも東海林太郎さんの作品には、セリフがどなたかに代わる「すみだ川」「上海の街角で」等の作品があります。世界観を演出するために、セリフのみの担当を起用する事は珍しくなく、古くから行われる手法のようです。

 

 セリフ部分は、本来の浪曲では啖呵(たんか)と呼ばれるようです。俳優と同じ演技力が求められていると感じます。

 

 

史上初のオリジナルカラオケ収録盤?

 EP盤の「大利根無情」では、B面曲「親分お世話になりました」が終わった後に、伴奏のみの音源も吹き込まれています。

 

 歌詞カードには『練習用伴奏付』と印刷されていますが、「さあ、皆さんご一緒にどうぞ」と三波春夫さんが語った後に、伴奏のみの音楽が始まります。

 

 現在でいうカラオケ用の音源です。次作「忠太郎月夜」(1959)や「一本刀土俵入り」(1960)にも伴奏のみの音源は収録されています。

 

 三波春夫さんの作品だけかと思っていましたが、君和田たみえ(おそらく、後の天津羽衣)さんの「稗つきくずし」(1958)にも伴奏音源が収録されています。

 

 どちらもテイチクさんの作品で、かなり早い時期にカラオケという楽しみ方をご理解されていたと感じます。

 カラオケが誕生するのは1970年代前半という考え方がありますが、テイチクさんは先見の明を持つレコード会社と感じます。

 

 

セリフは大げさくらいがちょうど良い?

 浪曲歌謡の聴きどころはセリフ部分と感じます。私は真山一郎さんの「刃傷松の廊下」(1962)のセリフが最もお気に入りです。

 

 最近話題のドラマで、思わず笑ってしまうくらいの大げさな演技がクローズアップされる事があります。

 歌舞伎ではなく、浪曲の啖呵もどこか通じる部分があると感じます…(^^;A。

 

 "大げさな感情表現がウケる"という事は、何かしらの不満がたまっている観客の心理が、芝居を鑑賞する事で晴らされているようにも感じます。

 

 もしそうだとすれば、浪曲歌謡が支持を集めた1960年代初期にも、当時の世の中に対する何らかの不満が存在しており、似たような役割を果たしていたのかな?と考えたりもします。

 

 

曲情報

レコード

 発売元:テイチクレコード

 品番:C-4271(SP盤)

    NS-105(EP盤)

 

 

 A面

  「大利根無情」

  作詩:猪又良

  作編曲:長津義司

  演奏時間:3分28秒

 

  テイチク・レコーディング・オーケストラ  

 

 

 B面

  「親分お世話になりました」

  作詩:伊野上のぼる

  作曲:陸奥明

  編曲:長津義司

  演奏時間:3分28秒

 

  テイチク・レコーディング・オーケストラ

  (練習用伴奏付)

 

参考資料

 「大利根無情」レコードジャケット

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社