ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」矢島美容室(平成20年)

いつ流行った?

 矢島美容室さんの「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」は、平成20年(2008年)にヒットしました。

 

 オリコンランキングでは、発売と同時に上位にランクインし、2008年11月にトップテン入りしています。翌年1月にも1週だけトップテンに返り咲いています。

 

 音楽配信も行われています、ダウンロード数の推移は下記の通りです。

年月 着うたフル® PC配信(シングル)
2008年10月 配信開始 配信開始
2008年11月 25万(プラチナ) -
   
2009年04月 50万(ダブル・プラチナ) -
   
2012年11月 - 10万(ゴールド)

参考)「一般社団法人 日本レコード協会 有料音楽配信認定」

 

 

 


矢島美容室 / ニホンノミカタ-ネバダカラキマシタ-

注)avex 確認済み の動画

 

 

 音楽配信でも、発売と同時にダウンロード数が集中しているように感じます。PC配信では4年後に10万DLを達成しています。

 冒頭に映る3人の姿は、シュープリームスさんのパロディでしょうか…。

 

 

作詞=秋元康さんではない

 矢島美容室さんはとんねるずさんのお二人に、DJ OZMAさんが加わった3人のユニットです。とんねるずさんが関わる作品のため、作詞は秋元康さんと思い込んでいましたが違いました。エンドウサツヲさんが作詞をされています。

 

 秋元康さんは「雨の西麻布」(1985)や「情けねぇ」(1991)、「ガラガラヘビがやって来る」(1992)等、とんねるずさんの作品を手掛けられています。

 

 ユーモアに風刺が混じる「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」の歌詞は、秋元康さんの表現する世界観に似ていると感じます。

 

 とんねるずさんの音楽は、コメディアンらしいユーモアを備えつつ、聴く音楽としての完成度も高いです。この作品でも音楽とユーモアが両立しています。

 

 コメディアンが発売した楽曲で最も支持を集めたのは、記録ではダウンタウンの浜田雅功さんがメインで歌った「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント」(1995)ですが、この作品には本業のユーモアの要素がありません。

 

 秋元康さんというと、若い世代向けのアイドルの作詞で大きな才能を発揮されておられますが、音楽として普通に聴ける作品で笑いの要素を取り入れる才能にも長けておられます。

 

 その作詞法というか、秋元康さんの考え方がこの作品に反映されているように感じます。

 

 

構成が秀逸な作詞

 「ニホンノミカタ -ネバダカラキマシタ-」は、日本が好きな海外の方が主人公の作品です。

 テーマが独特ですが、作詞のお手本と感じるくらい、歌詞の組み立て方がしっかりしています。

 

1.出だしは、日本が好きな"変わった外国人"

 冒頭は、"日本人から「変な外国人」と見られている事"や、"日本の文化を分かっていない様子"が描かれています。 

 これは、米米CLUBさんの「FUNK FUJIYAMA」(1989)に通じる描写と思います。

 

2.次に、海外の目から見た"変わった日本人"

 次に、おそらく「日本ってこういう国だよ。」と教えられていたのに、現実は全く違っていて、ギャップに戸惑う心理が登場します。

 

 日本人は優しいと聞いていたのに、道を尋ねたときに少し言い間違えただけで睨まれた事、女性のアニメキャラのコスプレをしているのが男性だった事が歌われています。

 

 "海外から見た変な日本"という視点で、ここまで踏み込んだヒット曲は今まで無かったと思います。

 

3.実は、日本人より日本を知っている主人公?

 サビの部分はさらに踏み込んでおり、現実の日本を目の当たりにした主人公が、”現代の日本人は、海外から評価されているであろう日本の歴史や精神を知っているのか?”と疑い始める心理が描かれています。

 

 日の出づる国と言われる日本で、ニュースキャスターがいつも暗い顔をしている描写や、"侍に会えるのはどこか?"、"武士道は高速道路の名称か?"といった質問は、皮肉が込められている事を理解できます。

 

 昔の日本人が持っていた志が失われている事を嘆く際に、"坂本龍馬が泣いている"と形容する事は使い古された表現と感じますが、日本人ではない主人公が言及しています。

 

 

女装して歌う矢島美容室

 男性が女装する事に違和感が無くなったのがいつからか分かりません。SHAZNAさんのようなヴィジュアル系バンドが支持を得た90年代後期でしょうか。

 「慎吾ママのおはロック」(2000)がヒットした頃、特に何も感じなかったので、感覚的にこの時期と思われます。

 

 男性が女性心理を歌う事が一般化したのは1960年代で、ヒット曲の世界は割と男女の役割が入れ替わる事に対する敷居が低いと感じます。

 

 もし、矢島美容室というキャラクターではなく"実際に現在の日本を見た外国人"がこの作品を歌ったとしたら、自虐の要素が失われ、単なる批判になり、日本人に受け入れられる事はなかったと思います。

 

 日本人が歌っているというだけでなく、謎めいたキャラクターを装って歌う、というフィルタは、聴き手に抵抗を和らげており、この作品の重要な要素です。

 

 

今でも通用するメッセージ性 

 "税金は無駄にしない"等は、2020年現在の日本にも通じる風刺を感じます…(^_^;A。

 

 レコード音楽に限らず、世の中を批判する場合、直接的な表現では支持を集められません。

 

 主人公の"それでも日本が好き"というフレーズには、「しっかりしてよ!」という意味があるようで、励ましの要素も含んでいるように感じます。

 

 終盤に"ポニョ"という当時の流行語が登場しますが、12年前の作品ながら、様々な工夫がされており、色あせない個性を備えていると感じます。

 

 

参考資料

 「you大樹」オリコン

 「一般社団法人 日本レコード協会 有料音楽配信認定」