ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「真夏の出来事」平山三紀(昭和46年)

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流行時期(いつ流行った?)

 平山三紀さんの「真夏の出来事」は、昭和46年(1971年)にヒットしました。オリコンチャートによると、9月初旬から10月中旬にかけてヒットしています。

 

同時期に流行った曲(昭和46年9月初旬~10月中旬)

 オリコンでは、小柳ルミ子さんの「わたしの城下町」が首位となっています。

 

 また、尾崎紀世彦さんの「さよならをもう一度」湯原昌幸さんの「雨のバラード」仲雅美さんの「ポーリュシカ・ポーレ」と、男性歌手の作品が目立ちます。

 

 洋楽では、映画『小さな恋のメロディ』の主題歌、ザ・ビー・ジーズさんの「小さな恋のメロディ(メロディ・フェア)」がヒットしています。

 

 


平山三紀 - 真夏の出来事

 

ポップス化が進んだ年のヒット曲

 私の個人的な印象ですが、1970年と1971年のヒット曲のサウンドには明確に線引きできる変化があります。

 それは、“主流だった歌謡曲調の作品が少なくなった”という変化です。

 

 「真夏の出来事」も聴いた印象では、歌謡曲ではなくポップス寄りの作品と感じます。そのため、ポップスに耳が慣れてしまっている今の若い世代の方が聴くと、「ふ~ん、普通かな。」という印象を受けてしまうかも知れません。

 

 しかし、当時のヒット曲を聴き比べると、新しいサウンドでインパクトのある作品だったと感じます。

 

 

 “ソロの女性歌手の作品”という定義で考えると、前年(1970年)には、辺見マリさんの「経験」安倍律子さんの「愛のきずな」などがあります。

(これらの作品は、レコードジャケットが見開きになっており、壁に貼ってジャケットをポスターに出来るデザインのため、男性層を狙って企画された作品と思われます。「真夏の出来事」も同じ見開きのデザインです。)

 

 これらの作品と「真夏の出来事」を比べると、やはり前年の作品は、歌詞でも大人の世界観が描かれており、歌謡曲っぽさを感じるサウンドが強めに出ているように感じます。

 

 

 1971年は、新しい若い世代の歌手が多く登場した事、そして、その新しい歌手が歌う作品には、別れの場面を歌う曲であっても、明るい印象を与える長音階の作品が多かった事が、ポップス化していると感じる理由として挙げられると思います。

 

 もしかすると背景には、レコード会社がターゲットにするレコード購買層を若年層に傾ける狙いがあったのかもしれません。

 

 

ヒット曲のポップス化を支えた作曲家

  「真夏の出来事」は筒美京平(つつみ きょうへい)さんが作曲された作品ですが、1971年は、筒美京平さんが作曲されたヒット曲が多く登場した年でもあります。

 

 レコード大賞に選ばれた尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」や、南沙織さんの「17才」堺正章さんの「さらば恋人」などを作曲されていますが、その年を代表する作品、後世に歌い継がれる作品が何曲もヒットしました。

 

 

 筒美京平さんの作品の特徴は、メロディを聴いたとき、「これは筒美さんの作品だ。」と感じない事です。

 

 有名な作曲家の作品は、聴いたときに「これは〇〇さんが作曲した作品だな。」と感じます。しかし、筒美さんの場合は、その個性が表面に現れず、後々、「筒美京平さんが作曲してたんだ!」と気付く作品が多いです。

 

 意図的に個性を消しているように感じますし、表現の幅が広いとも感じます。

 

 

「真夏の出来事」のポップス的なところ

 明るさを感じる長音階である事がポップスと感じる一番の理由です。そして、歌い出しはヨナ抜き長音階ですが、サビの部分が全音階的長音階である事です。

 

 厳密には4の音がありませんが、聴いた印象では学校で習うドレミファソラシドの音階で、ベタというのではなく、単純明解な印象を与えてくれる音階です。

 

 そして、そのメロディが何度も繰り返される事、聴き手の心に響かせるような歌唱力が必要ではない動きである事もポップスらしさを感じる理由です。

 

 

 平山三紀さんは独特なお声を持っており、どちらかというと歌謡曲向きな歌声であると感じます。しかし、筒美さんは聴き手に歌謡曲っぽさを与えないようにメロディを作られていると感じます。

 

 

 歌詞においても、ポップスらしさが表現されていると感じます。

 

 曲の最後に英文のセリフが吹き込まれている事が印象的ですが、別れを予感している主人公の心情が詳細に描かれておらず、まるで風景として描くような視点の作詞が、ポップスの要素を備えていると感じます。

 

 また、“真夏”と題しながら“別れ”をテーマにしている事も興味深いです。それまでの流行歌で形成されてきた、“夏は恋愛の季節”という概念を覆しているからです。

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「真夏の出来事」はFメジャー(ヘ長調)です。

 

 

曲情報

 発売元:日本コロムビア株式会社

 品番:P-126

 A面

  「真夏の出来事」

  英題:BUT WE'RE PART NOW !

  作詞:橋本淳

  作曲:筒美京平

  演奏時間:4分22秒

 

 B面

  「ブン・ブン」

  英題:BUM BUM BUM

  作詞:橋本淳

  作曲:筒美京平

  演奏時間:2分33秒

 

  スリー・シンガーズ

  コロムビア・オール・スターズ

 

参考資料

 「真夏の出来事」レコードジャケット

 『全音歌謡曲全集』全音楽譜出版社

 「you大樹」オリコン