流行時期(いつ流行った?)
松本ちえこさんの「恋人試験」は昭和51年(1976年)にヒットしました。オリコンランキングによると、7月中旬から8月中旬にかけて人気となったようです。
レコードは5月末に発売されています。
注)松本ちえこ - トピックの動画
5月末発売から7月中旬にヒット、ひと月ちょっと経ってからヒットしていますが、この時代では珍しい事ではありません。
現在のように発売初週にたくさん売れてしまうのではなく、発売から少しずつランキングが上がっていく、多くの歌がそういった売れ方をしていた時代です。
同時期に流行った曲
この作品が人気だった時期は、山口百恵さんの「横須賀ストーリー」が首位となっています。太田裕美さんの「赤いハイヒール」もヒットしており、女性アイドルの人気が目立つ印象を受けます。
演歌・歌謡曲の作品は少なくなっています。二葉百合子さんの歌謡浪曲「岸壁の母」が異例のヒットを記録しています。後、この年にずっと売れ続けた都はるみさんの「北の宿から」も支持を集めています。夏でも売れていたんですね。
受験を取り入れた歌詞
「恋人試験」は作詞にアイデアを感じる作品です。タイトル通り、試験のテスト形式で歌詞が構成されています。選択肢形式の問題で、「設問」⇒「選択肢」⇒「設問」⇒「選択肢」⇒「採点結果」の順番で歌詞が作られています。
アイドルポップスに限らず、好きな人を想う自分の気持ちを歌詞にした作品がほとんどですが、その自分の気持ちを表現するために、恋愛とは無関係のテストを用いている点が斬新な作品であると感じます。
おそらく、この発想が曲の人気につながった事と思います。そして同時に、「恋人試験」が多くの人に支持されたという事は、現在も続く受験勉強や学歴に対する価値観がこの時代に定着しつつあったのかな?とも感じます。
受験をテーマにした作品というと、高石ともやさんの「受験生ブルース」(昭和43年)しか思い浮かびません。
若者が学歴のために受験勉強をする事を皮肉に表現したのではなく、単純にアイドルポップスの題材として深い意味もなく受験が用いられた事がこの作品の特徴です。
「恋人試験」は面白い作品です。通常の試験と違って、満点を取る人は落第になります。歌の主人公は何の計算も無く感情で採点して、100点満点中65点くらいが一番良い、それも答えをわざと間違えて回答する人が合格です、と歌っています。
歌唱力が少し・・・
受験勉強をする年齢ですので、高校生の女の子の気持ちが描かれているのかな?と感じますが、最後の設問の選択肢に、ちょっとだけお酒を飲んでみたい、という気持ちが出てきます。
歌詞の最後の最後に、ちょっと悪ふざけした感じで歌われており、設問の正答かどうかは分かりません。本当に練られた作詞と感じます。現代ではアイドルの作品の歌詞にお酒を飲みたいなんて、とても恐ろしくて書けない事と思います。
若者の気持ちが歌われているという印象は、松本ちえこさんの歌唱でも感じる事が出来ます。サビの部分では、0点や100点の時はちょっとだけご機嫌ななめな歌い方、最後は機嫌を直した歌い方になっています。
歌い出しはのんびりした雰囲気で進みますが、サビの部分は感情を表現したり、早口で歌わないとダメだったりで、聴いていて「歌うの大変そう~」、と感じてしまいます。
そのためか、「恋人試験」はアイドルの作品で見かけやすい音域が1オクターブ以内と狭い幅で作曲されています。すべての作品を調べてはおりませんが、薬師丸ひろ子さんの作品で良く見かけます。
おそらく、歌手が出せる声の範囲を考慮し、その中で個性を活かせるメロディを作られたのだろう、と感じます。
楽曲分析
「バンドプロデューサー5」の分析では「恋人試験」はGメジャーです。サビの部分はちょっとマイナーさを感じるコード進行に変化しているようです。
曲情報
発売元:株式会社キャニオンレコード
品番:C-1
A面
「恋人試験」
作詞:伊藤アキラ
作曲:あかのたちお
編曲:あかのたちお
演奏時間:3分8秒
B面
「すてきな三銃士」
作詞:さいとう大三
作曲:あかのたちお
編曲:あかのたちお
演奏時間:3分26秒
参考資料
「恋人試験」レコードジャケット
「You大樹」オリコン
「バンドプロデューサー5」