ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「アンジェリータ」ダーク・ダックス(昭和40年)

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流行時期(いつ流行った?)

  ダーク・ダックスさんの「アンジェリータ」は、昭和40年にヒットしました。ヒットのきっかけは昭和39年の紅白歌合戦で披露した事らしいです。

 『ミュージックマンスリー』の歌謡曲部門のランキング推移は下記の通りです。

 

集計日付 順位
昭和40年2月 8位
昭和40年3月 8位
昭和40年4月 11位

 

戦争をテーマにした作品の日本語カバー曲

 「アンジェリータ」は洋楽の日本語カバー作品です。原作は、ロス・マルチェロスさん盤です。

 

 ダーク・ダックスさん盤の歌詞で歌われているストーリーが、史実だったのかどうかは分かりません。 第二次世界大戦のイタリアで起きた、アンツィオの戦いでの悲劇が描かれています。

 

 原曲がイタリアの作品ですので、イタリア軍が主人公になっています。

 

 ストーリーは、イタリアの兵隊が敵軍を目指して進軍している途中で、幼い女の子が一人でいるのを見つけて保護する所から始まります。

 

 その女の子は国同士が争う過酷な状況ということは理解できず、ただ介抱してくれた軍隊の人たちになつきます。兵士にとっては生きるか死ぬかの前線ですが、その女の子の存在は、戦い争う事を強いられた方々にとって、見失いかけた日常の心を取り戻すきっかけになります。

 

 その女の子はアンジェリータと名付けられます。英語で言うエンジェルと思われます。彼女は進軍する部隊と一緒について行く事になります。

 

 進軍する人たちは、共に歩む女の子の無邪気な姿を見て心が和む時を過ごしますが、敵国の兵隊にとってはそんな事は関係なく、最前線のアンツィオで対峙した時、兵士の心を癒していた女の子は敵軍に銃撃され、命を落としてしまう場面が描かれています。

 

 一緒に進軍していた兵隊たちが嘆き悲しむ姿が歌われるところで、作品は終了します。

 

作品が伝えたい事は、やはり戦争反対

 起承転結が明確に構成された物語を歌う「アンジェリータ」が、聴き手に伝えようとしている事は、“人間同士が争う事は愚かな行為だ。”という事だと感じます。

 

 このテーマは、数年後にフォークソングで取り上げられる反戦歌に共通している価値観です。

 

 ただ、世の中に意見する作品というのは、支持を得にくい事は皆さんご存知の事で、直接、“戦争反対”と表現せずに、戦争の中で起きた悲劇を描く事で、聴き手にそう思わせる手法となっています。

 

 この表現技巧は、前年にヒットしたキングストン・トリオさんの「花はどこへ行った」(昭和39年)でも感じられます。

 

 ただ、「花はどこへ行った」と「アンジェリータ」には、戦争を風刺しているか、していないかの表現の違いがあります。

 

 「アンジェリータ」では、戦争で親とはぐれた子供が見つかって、しばらくは兵隊と楽しそうに過ごしたけれど、結局戦争によって殺されてしまった。というエピソードだけが歌われています。

 

 “こんなに悲しい出来事が起きる戦争は、決して行ってはいけない”という主張が、この作品では描かれていません。ただ、戦争中の悲劇と、その場面に直面した人間の感情を描いているだけです。

 

 「このストーリーだったら、この曲を聴いた人は、きっと"戦争は愚かな事だ。"と感じてくれるだろう。だから省こう。」、という作者の意図を感じます。

 

 聴き手にとっては、「アンジェリータ」では戦争で、実際に人間性を疑う体験をした人物の心情が描かれていると感じますので、おのずから戦争反対と感じてしまいます。

 こんなひどい事をした敵国に報復をしないと!と感じる人はいないと思います。 

 

 

分かりやすい楽曲の構成

 初めて聞いたときは、終始、行進曲のような明るい曲調なので、「山男の歌」(1962年)のように、『最後まで明るい感じで終わるのかな?』と思っていました。

 

 聴き手にとっては楽曲には変化が感じられない作品です。そのため、最後に、軍隊の希望の存在だった女の子が撃たれて息絶えるシーンに差し掛かった時はびっくりしました。

 

 

 音楽的には明るい作品だったので、何とも言えない悲しい結末が待っていようとは思いませんでした。当時、紅白で視聴されていた方々も同じ気持ちになったと思います。

 

 ただ聴いているだけでは、音楽的に変化はありません。しかし、最後に悲しい結末を描いた歌詞で、聴き手の心に訴えるように作られた楽曲であると感じます。

 

  同じメロディで、兵隊の喜びや悲しみの感情を表現できるダーク・ダックスさんのコーラスは、すごい技術だと感じます。

 

 聴いている側には、それぞれの場面で主人公がどういう心理状態であるかが伝わってきます。

 

 この作品がヒットした当時、ベトナム戦争に反対する世相が日本に存在したかどうかは分かりませんが、日本語で歌われた反戦歌の第1号のヒットではないか?と感じる作品です。

 

 

 

 

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「アンジェリータ」はE♭メジャーです。コード進行は勉強中ですが、長調ですが、悲しみを帯びたマイナーな響きを感じる和音で構成されている部分が多い気もします。

 

 

 

曲情報

 発売元:キングレコード株式会社

 品番:BS-7068

 A面

  「アンジェリータ」

  原題:ANGERITA DI ANZIO

  訳詞:ダーク・ダックス

  編曲:服部克久

  演奏時間:3分14秒

 

 B面

  「アモーレ・ミオ」

  原題:AMORE MIO

  訳詞:あらかはひろし

  編曲:服部克久

  演奏時間:3分17秒

 

参考資料

 「アンジェリータ」レコードジャケット

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 「バンドプロデューサー5」