流行時期(いつ流行った?)
北島三郎さんの代表曲の1つと感じる「函館の女」は、昭和40年11月に発売され、昭和41年にヒットしました。
『ミュージックマンスリー』のランキングでは、8ヶ月間もランクインしています。昭和41年を代表するヒット曲であると思われます。
最も順位が高かったのは昭和41年7月です。6月に順位を落としているのは、作品の人気が集まったものの、レコードの増産が追い付いていなかったからではないかと考えられます。
5月から7月にかけて、かなり流行っていたと思われます。6月末にビートルズさんが来日公演をされた年ですので、もしかしたらビートルズさんも耳にしたのかも知れない流行歌です。
集計日付 | 順位 |
昭和41年1月 | 20位 |
昭和41年2月 | 18位 |
昭和41年3月 | 15位 |
昭和41年4月 | 13位 |
昭和41年5月 | 7位 |
昭和41年6月 | 10位 |
昭和41年7月 | 5位 |
昭和41年8月 | 10位 |
軽快なルンバのリズム
「函館の女」を聴いて最も印象に残るのは、陽気なリズムパターンです。ルンバのリズムが採用されているようです。
※『新訂エレクトーン事典』参照
リズムは複雑なもののようで、分かりやすく図式された資料を見つけられませんでしたが、聴き手の耳に残るリズムは、上図の黄色でマーカーした部分です。
左の小節のタンタタ ・ タン タンタンタンタンと聴こえたり、
右の小節の ・ タタタンタン タンタンタンタンと聴こえたりします。
1拍目で、タタと十六分音符が刻まれている点が特徴です。このリズムは、なぜか耳に残りやすいです。
昭和3、40年代のヒット曲で頻繁に用いられていたような印象があり、おそらくこのリズムを最初に用いたのは、ポール・アンカさんの「ダイアナ」(昭和33年)ではないか?と思われます。
明るい曲調の作品にピッタリのリズムです。
『女』を『ひと』と読むタイトル
ヒット曲の歌詞で見かける表現技巧で、『特定の漢字に、常用外の読み方をあてる技術』があります。
曲を聴いているだけでは分からない、歌詞カードを見て初めて気が付く“当て字”を、あえて用いる事に、作詞家の考えが隠れていると感じます。
「函館の女」のように、『女』と『ひと』と読む作品は昔から存在します。
"おんな"と読むと文字数が増えますし、歌詞で表現する心情にもシリアスさが増してしまいます。“人”という漢字では対象が不特定多数で性別もあいまいになります。
そのため、『女』と書いて『ひと』とルビをふる事で、文字数も少なく収められつつ、作詞家が表現したい世界観を損なわずに済む、というテクニックになったのだと思われます。
歌詞カードでは英題が「HAKODATE NO HITO」となっていますが、残念ながらレコードの英題には、「HAKODATE NO ONNA」と誤った読み方で印刷されています。
北海道が舞台のご当地ソング
「函館の女」がヒットした時期は、ご当地ソングと呼ばれる作品が多く登場したように思います。
昭和41年以降、北海道の街を舞台にした作品が増える事になります。そのため、「函館の女」は先駆けのヒット曲であると感じます。
もしかしたら、この作品が大変流行ったから、北海道のご当地ソングが増え始めたのかも知れません。
バンドプロデューサーの分析では、「函館の女」はE♭メジャー(変ホ長調)です。
曲情報
発売元:日本クラウン株式会社
品番:CW-394
A面
「函館の女」
英題:HAKODATE NO HITO
作詞:星野 哲郎
作曲:島津 伸男
演奏時間:3分10秒
B面
「北海道恋物語」
英題:HOKKAIDOKOIMONOGATARI
作詞:南沢 純三
作曲:関野 幾生
編曲:中村 貞夫
演奏時間:3分37秒
参考資料
「函館の女」レコードジャケット
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
『新訂エレクトーン事典』財団法人ヤマハ音楽振興会
『全音歌謡曲全集15』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー」