ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「浪曲子守唄」一節太郎(昭和41年)

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流行時期(いつ流行った?)

 一節太郎(ひとふし たろう)さんの「浪曲子守唄」は、レコードの発売から、曲がヒットするまでにとても時間がかかった作品の1つです。


 昭和38年(1963年)12月に発売されましたが、ヒットチャートに登場したのは、昭和41年2月です。

 

集計日付 順位
昭和41年2月 19位
昭和41年3月 圏外
昭和41年4月 14位
昭和41年5月 19位

 『ミュージックマンスリー』歌謡曲部門のランキング推移

 

 海外誌『CashBox』では、昭和41年4月2日、4月9日に発売されたランキングで「Naniwabushi Komori-Uta」という表記でランクインしています。

 「浪花節子守唄?時期的に出世子守唄の事かな?」と勘違いしてしまいましたが、異なる雑誌のランキングで同時期に登場しているため、「浪曲子守唄」と考えられます。

 

 海外誌の情報は信ぴょう性が低く目安程度です。何日遅れで情報が伝達されているかも分かりませんので。

 

 『ミュージックマンスリー』によると、「浪曲子守唄」は昭和41年4月に最もヒットしたと推定されます。

 

 流行ったレコード作品が映画化される時代でしたが、「浪曲子守唄」も半年後の昭和41年10月に映画公開されているため、この年にヒットした事は間違いないようです。

 

作品について

  昭和38年12月の発売から昭和41年4月にヒットするまで、2年半弱も時間がかかった作品です。

 

 この間は単に時間の長さで済ませられる期間ではなく、時代の変化が著しい時期です。

 東京五輪の盛り上がりも終わって、ビートルズさんやベンチャーズさんが登場して、流行歌の音楽表現も様変わりしてしまった時代です。

 レコードジャケットも2、3色刷りからカラー印刷に変化した時期に、なぜか「浪曲子守唄」が支持されていました。

 

 

 創業間もない日本クラウンさんから発売された「浪曲子守唄」は、おそらく昭和38年当時にヒットした浪曲師の鉄砲光三郎さんが歌う「民謡鉄砲節」のヒットに反応して企画された作品であると考えられます。

 

 しかし、翌年に日本初の東京オリンピック開催を控えた時期なので、若さ・明るさといった希望を取り上げる作品が多い時代背景だったため、奥さんに逃げられた旦那さんがひとりで赤ん坊を育てるという主人公はなかなか表舞台に姿を見せる事が出来なかったのだと考えられます。

 

 昭和41年が不況だったのかどうかは分かりませんが、歌の主人公も悲しみを背負った人物が登場するようになりました。

 

 「浪曲子守唄」はこのタイミングで最も支持を集めましたが、演歌系の作品ですので、おそらく昭和38年発売以降、細々と売れ続けていた作品だったのではないか?と感じます。

 昭和41年に人気に火が付いた作品としては、記録に残っている順位が低いと感じるからです。

 

ヒットに時間がかかった理由

 時代背景もありますが、最大の理由は一節太郎さんが独特のダミ声だったからであると考えられます。

 

 “歌手と言えば、きれいな声である事”が暗黙の価値観だった時代に、レコード化された「浪曲子守唄」は異色の作品だったと考えられます。

 

 しかし発売後の数年のうちに、音楽表現の幅が広がり、若者が自由に歌い始める時代となりました。従来と異なる価値観の作品が支持される土壌に変化したタイミングで、支持を集めているように捉える事も出来ます。

 

 昭和41年は、歌謡曲系の歌手でも悪声と言われるハスキーな声を持つ、青江三奈さんの「恍惚のブルース」や、森進一さんの「女のためいき」がヒットした年でもあります。

 

 歌手の声質に対する固定概念や抵抗が薄くなった、と表現すれば良いのでしょうか。当時はカラオケという言葉は存在しませんでしたが、流行歌は聴くものではなく歌うもの、という価値観が強まったのかも知れません。

 

 バンドプロデューサーの分析では、「浪曲子守唄」はB♭マイナー(変ロ短調)です。発売後の数年で聴き手の価値観が大きく変化した事が、この作品のヒットに結び付いたのではないか?と感じます。

 

曲情報

 発売元:クラウンレコード

 品番:CW-9

 A面

  「浪曲子守唄」

  作詞:越 純平

  作曲:越 純平

  編曲:福田 正

  演奏時間:4分23秒

 

 B面

  「一発節」

  作詞:緒方 優作

  作曲:越 純平

  編曲:福田 正

  演奏時間:3分33秒

 

参考資料

 「浪曲子守唄」レコードジャケット

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 『CashBox』海外誌

 『全音歌謡曲全集14』全音楽譜出版社

 「バンドプロデューサー」