ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「勇気あるもの」吉永小百合とトニーズ(昭和42年)

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流行時期(いつ流行った?)

 吉永小百合さんトニーズさんが歌う「勇気あるもの」は、昭和41年(1966年)10月に発売されました。年末の紅白歌合戦でこの作品を歌唱されています。

 

 『レコードマンスリー』の“全国のレコード店のえらんだ今月のベスト・セラーズ”によると、レコードがヒットしたのは、翌年になります。

集計日付 順位 備考
昭和41年12月 ビクター4位 ビクターさんが発売したレコードのみのランキング
昭和42年1月 11位 歌謡曲部門
昭和42年2月 7位 歌謡曲部門
昭和42年3月 5位 歌謡曲部門
昭和42年4月 9位 歌謡曲部門
昭和42年5月 25位 歌謡曲部門

 

 もしかしたら、紅白歌合戦が多くの人にとって曲を知る機会になったのかも知れません。昭和42年(1967年)の2月から4月にかけてヒットしました。

 

同時期にヒットしていた曲

 昭和42年(1967年)は、数多くのグループサウンズが登場する年になります。しかし、年明けは、今で言うグループサウンズ(エレキギターの音色が耳に残る男性グループの作品)はほとんど登場せず、どちらかと言うと、フォークソング調の作品が支持を集めていました。

 

 荒木一郎さんの「今夜は踊ろう」や、ザ・スパイダースさんの「なんとなくなんとなく」ジャッキー吉川とブルー・コメッツさんの「何処へ」等、どちらかと言うとフォークに近い作品がヒットしていました。

 

 

作品について

 注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Victor Entertainment, Inc.の動画

 フォークソング調の作品

 「勇気あるもの」は当時の流行に合わせたようで、フォークソング調の作品です。

 

 ビクター所属の青春歌謡歌手、橋幸夫さんや三田明さんとデュエットを歌っておられたため、学園のマドンナという印象が強い吉永小百合さんですが、この作品は従来のイメージと異なる作品です。

 

 この作品が異色と感じる理由は、トニーズさんという男性グループと歌っている事です。橋幸夫さんや三田明さんとのデュエットのように、交互に歌う事はなく、終始トニーズさんが吉永さんと共に歌い続けています。

 

 どちらかだけが目立つという事は無く、歌詞で描かれている世界観のように、荒野を共に歩き続けていると感じるバランスの歌唱です。

 「勇気あるもの」は、どちらかと言うとフォーク系に近いのかも知れませんが、トニーズさんのコーラスは、グループサウンズの作品に近い印象を受けます。

 

 

 幸せを探し求める若者が主人公

 タイトルがこれまでの流行歌では見かけないネーミングであるため、実際に聴くまでは、“どのような作品何だろう?”と、全く想像出来ませんでした。

 

 しかし、実際に聴いたときに、当時流行していたフォークソングの主題で取り上げられる“友”だった事が分かりました。

 青春歌謡で歌われる学友や同級生という友達ではなく、思想や価値観を共有できる仲間、という意味合いで表現されているように感じます。

 

 「勇気あるもの」は若者が主人公で、ただ歩き続ける姿が描かれています。そのため、世界観は前年にヒットした「若者たち」(66)と似ています。

 

 1960年代後期の歌で表現される若者は、“何かに向かって歩き続ける姿”を描写する作品が多く登場します。2年後にヒットする「昭和ブルース」(69)も価値観は同じ系統の作品であると感じます。

 

 1960年代の流行歌で登場した“若い事は、それだけで良い事だ”という視点で描かれた作品は、学生生活の一場面を切り取って、その時に感じた心情が歌詞になっている作品が多いです。

 そのため、“登場人物が何を思っているか?”という答えは歌にありました。

 

登場人物の心情を描かない歌詞

  しかし、「勇気あるもの」に登場する若者は、“何を考えて歩き続けているのか?”が描かれていません。どこに向かって歩いているかも明らかにされる事はありません。

 おそらく主人公自身も、“自分が歩む先に何があるのか?”が分からないまま歩き続けているのだろう、と感じさせてくれます。

 

 どこに向かっているのか明確な表現がされないまま歩き続ける姿は、自分がこれから生きていく人生、期待と不安が入り混じった心情が隠されていると感じます。描かれる姿から、どちらかというと、不安な気持ちが強めに表現されていると感じます。

 

 しかし、この歌では仲間と一緒に歩く姿が描かれています。

 

 一人では不安で心細いけれど、仲間と共に進んでいけば、歩きにくい道であっても、強い風で砂けむりが起きる困難な道でも、勇気を持って進むことが出来る、という気持ちが歌われています。

 

 

 「勇気あるもの」はB♭マイナー(変ロ短調)です。これまでの青春歌謡では描かれる事が無かった若者の心情が描かれている事がこの作品の特徴です。フォークソングのスタイルが、そのような世界観を生み出したのかも知れませんが、今聴いても新しさを感じる作品です。

 

ヒット曲のその後

 この作品の作詞が佐伯孝夫さんではなくなかにし礼さんだった、という気になるWebページを見つけたので、追記いたします。吉永小百合の名曲“ゴースト”だった(東スポWebのページ)

 

 詩のような歌詞ですので、言われてみれば納得してしまいますが、複雑な気持ちになります…(*_*;

 

 

曲情報

1967年 年間15位(歌謡曲部門)

 

 

レコード

 発売元:日本ビクター株式会社

 品番:SV-483

 

 A面

  「勇気あるもの」

  作詞:佐伯孝夫

  作曲:吉田正

  編曲:吉田正

  歌:吉永小百合とトニーズ

  演奏時間:3分21秒

 

 B面

  「海に泣いてる」

  作詞:佐伯孝夫

  作曲:吉田正

  編曲:吉田正

  歌:トニーズ

  演奏時間:4分26秒

 

参考資料

 「勇気あるもの」レコードジャケット

 『レコードマンスリー』日本レコード振興

 『全音歌謡曲全集16』全音楽譜出版社

 「バンドプロデューサー」